企業の中・長期的発展を促すための投資家の責任を明確にする日本版スチュワードシップ・コード(「責任ある機関投資家」の諸原則)が本年2月に策定されたことを受け、機関投資家は投資先企業との建設的な「目的を持った対話」を模索している。これに伴い、企業サイドにも、機関投資家との「対話」が促進されるよう、自社のビジネスモデルや経営課題などの情報を分かりやすく提供する工夫が一層求められることになるのは間違いない。
「日本版」のモデルとなったイギリスのスチュワードシップ・コード(2010年策定)の冒頭には、「投資家にとって、スチュワードシップとは単なる議決権の行使にとどまらない。企業の戦略・リスク・資本構造・ガバナンスを監視し、これらに関与することも含まれる。関与とは、これらおよび年次総会の喫緊の議題に関して、目的を持って企業と対話することである」と記載されている。監視にとどまらず、さらに関与までするとなれば、情報に対する機関投資家の要求レベルも必然的に上がらざるを得ないだろう。
では、「対話」が促進される情報提供とは一体どのようなものだろうか。
“スチュワードシップ・コード先進国”、イギリスの財務報告評議会(Financial Reporting Council=FRC 日本の企業会計基準委員会に相当)が最近(2014年8月12日)まとめた「明瞭・簡潔な報告に向けて(Towards Clear & Concise Reporting)」と題する報告書(以下「本報告書」)を見てみよう。
まず、FRCが「良い企業報告の特徴」として挙げているのが以下の項目だ。・・・
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