機関投資家の間で「マテリアリティ」の開示を求める声が高まっているが(2020年2月10日のニュース『自社の「マテリアリティ」特定プロセスにおいて意識したい機関投資家の目線』参照)、今後は「ダブル・マテリアリティ」が非財務情報(≒サステナビリティ情報)開示のトレンドになっていく可能性がある。
マテリアリティとは「重要性」を意味するCSR用語であり、マテリアリティを開示する目的は要するに「自社にとって重要な課題は何か?」を明らかにすることにある。さらに、このマテリアリティに関し、欧州委員会が2019年に公表した「非財務情報開示指令に関するガイドライン」の中で「ダブル・マテリアリティ」という考え方に言及して以来、最近はマテリアリティが「シングル・マテリアリティ」と「ダブル・マテリアリティ」に区別されるようになっている。シングル・マテリアリティとは企業が環境や社会から「受ける」影響を示す“投資家目線”のマテリアリティであるのに対し、ダブル・マテリアリティとは、これに企業が環境や社会に「与える」影響を示す “(市民社会等を含む)マルチステークホルダー”目線のマテリアリティを統合したものを指す。
CSR : Corporate Social Responsibility(コーポレート・ソーシャル・レスポンシビリティ)の略で、一般的に「企業の社会的責任」と訳される。企業を、「社会の構成員」として位置付けることで、企業は取引先・消費者・株主・従業員・地域社会などのステークホルダーに対し、責任ある行動を行い、社会的課題に応え、信頼関係を築いていくべきという考え方。
現在、IFRS(国際財務報告基準)の母体であるIFRS財団が、従来の財務報告基準に加え、“サステナビリティ報告基準”の開発に乗り出しており、昨年(2020年)9月30日に市中協議文書「サステナビリティ報告」(以下、協議ペーパー)を公表し、意見募集を行ってきたが(2020年12月31日に募集締切り)、協議ペーパーでは、「ダブル・マテリアリティ・アプローチを開始することは、作業の複雑性を大きく増大させることになり、基準の採用に影響を与えたり遅延させたりする可能性がある」として、まずは投資家向けの「シングル・マテリアリティ」を追求する方針を示していた(2020年12月22日のニュース『IFRS財団による「サステナビリティ報告基準」開発が日本企業に与える影響』参照)。
これに対し投資家からは異論を唱える声が上がっている。・・・
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