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“ツール”は出揃うも、事業報告と有報の一体開示に企業が踏み切れない理由

既報のとおり、政府が中心となって現在、類似している部分が多い「事業報告および計算書類(以下、事業報告等)」(会社法)と「有価証券報告書」(金融商品取引法)の2つの開示資料を統合()するための道筋をつけるべく、2014年から下表の各種施策を打ち出している(2018年1月15日のニュース「事業報告等と有価証券報告書、一体化に向け前進」、2018年1月22日のニュース「有報と事業報告等の一体開示に向け経営陣が検討すべきこと」参照)。

有報と事業報告等の一体開示に向けたこれまでの取り組み
時期 主体 取り組みの内容
2014年6月 政府 日本再興戦略2014 32ページ
→企業が一体的な開示をするうえでの実務上の対応等を検討する旨を明記
2016年4月 金融庁・金融審議会 金融審議会「ディスクロージャーワーキング・グループ」報告(金融庁)7ページ
→事業報告等と有価証券報告書の開示内容の共通化や一体化を容易にすること等を提言
2017年12月 内閣官房・金融庁・法務省・経済産業省 「事業報告等と有価証券報告書の一体的開示のための取組について」
→両書類間の類似・関連する項目について可能な範囲で共通化を図ることとして、具体的に15項目を特定し、公表
2018年3月 財務会計基準機構 「有価証券報告書の開示に関する事項 -『一体的開示をより行いやすくするための環境整備に向けた対応について』を踏まえた取組-
→上記2017年12月に公表された15項目を踏まえ、記載の共通化のポイント・記載事例を公表
金融庁、法務省 「「一体的開示をより行いやすくするための環境整備に向けた対応について」を踏まえた取組について」
→財務会計基準機構が作成した「共通化のポイント」及び「記載事例」の内容は、関係法令の解釈上、問題ないものと考えられる旨公表
2018年12月 内閣官房・金融庁・法務省・経済産業省 「事業報告等と有価証券報告書の一体的開示のための取組の支援について」
→一体書類(有価証券報告書兼事業報告書)の記載例等の公表
 統合の方法として経済産業省が想定しているのは「一体開示」と「一体的開示」の2つである。「一体開示」とは会社法(事業報告等)と金融商品取引法(有価証券報告書)の要請を満たす一つの書類(有価証券報告書兼事業報告書)を作成して、株主総会前に開示することを指している。一方、 「一体的開示」とは「一体開示」に限らず、事業報告等と有価証券報告書の記載内容を可能な範囲で共通化し、別々の書類として作成・開示する場合等を包含するより広い概念とされている。

上記のとおり政府が一体開示を進める方針を固めてから既に6年半が経過しているにもかかわらず、現時点で一体開示を行っている上場企業は「ゼロ」である。その理由として、ある上場企業の開示担当者は、・・・

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