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気候変動およびTCFDが“コーポレートガバナンス・マター”となった背景

周知のとおり、改訂コーポレートガバナンス・コードでは、プライム市場上場会社に対し、気候変動が自社の事業活動などに与える影響をTCFD等に基づき開示を求める補充原則3-1③が新設される(2021年4月7日のニュース「英文開示、気候変動開示はどこまでやればよい?」、2021年4月15日のニュース『改訂CGコード解説(4) 「中長期的な持続可能性」に関する補充原則』参照)。同原則に対し企業からは、「サステナビリティ全般の方針を示せというのであればともかく、コーポレートガバナンス・コードが気候変動という特定のテーマについて、しかも特定の開示フレームワークを推奨したうえで開示を求めることには違和感がある」との声が聞かれる。これらはマネジメントが対応を検討すればよいことである、というのがその理由だ。

TCFD : 主要国の金融当局(中央銀行、金融監督当局、財務省)やIMF(国際通貨基金)、世界銀行、BIS(国際決済銀行)、OECD(経済協力開発機構)などで構成される国際的な金融システムの安定を目的とする組織である金融安定理事会(FSB)が設置した組織。TCFDとは「Task Force on Climate-related Financial Disclosures」の略である。TCFDが2017年6月に公表した最終提言は、気候変動リスクに関する情報開示のフレームワーク(枠組み)のグローバルスタンダードになりつつある。この開示フレームワークは制度開示書類、つまり日本においては有価証券報告書への適用を想定しているが、日本においては現状、金融庁が気候変動リスクについて「開示義務化の予定はない」と明言しており、有価証券報告書だけでなく、統合報告書など投資家向け任意開示書類を含む開示媒体への“自主的な”記載が推奨されている。

補充原則3-1③
上場会社は、経営戦略の開示に当たって、自社のサステナビリティについての取組みを適切に開示すべきである。また、人的資本や知的財産への投資等についても、自社の経営戦略・経営課題との整合性を意識しつつ分かりやすく具体的に情報を開示・提供すべきである。
特に、プライム市場上場会社は、気候変動に係るリスク及び収益機会が自社の事業活動や収益等に与える影響について、必要なデータの収集と分析を行い、国際的に確立された開示の枠組みであるTCFDまたはそれと同等の枠組みに基づく開示の質と量の充実を進めるべきである。

実は、気候変動やTCFDが“コーポレートガバナンス・マター”となった背景には、・・・

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