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気候変動への意識は高い日本企業、開示では“周回遅れ”に

周知のとおり、今般のコーポレートガバナンス・コード(以下、CGコード)の改訂で新設された補充原則3-1③では「気候変動に係るリスク及び収益機会が自社の事業活動や収益等に与える影響」についてTCFD等の開示フレームワークに基づく開示が求められたところだ。元々、気候変動に対する日本企業の意識は高く、生命保険協会が企業に対して行った「企業価値向上に向けた取り組みに関するアンケート」(2019年度版)における「気候変動に対する、貴社の捉え方・スタンスについて教えて下さい」との問いに対しては、「リスクとともに、ビジネス機会がある」と回答した企業が69.7%(回答企業数508社)にも上っている(45ページ参照)。しかし、「開示」に対する取り組みは遅れており、「TCFDに基づく気候変動関連情報の開示」について、「既に開示している」と回答した企業はわずか8.5%(回答企業数508社。以下同)にとどまる。一方、「TCFDについてよく知らない」と回答した企業が24.9%、「開示しない予定」と回答した企業が15.0%、「今後、開示に向けて検討する予定」と回答した企業が31.2%となっており(46ページ参照)、TCFD開示については多くの企業がほぼ“白紙”の状態と言える。こうした中で、改訂CGコードによりTCFD等の開示フレームワークに基づく開示が求められ、さらに気候変動が「法定開示」の対象となり、有価証券報告書での開示が求められる方向となっている(2021年6月25日のニュース「気候変動、有価証券報告書での開示義務化へ」参照)。こうした急激な動きに企業側からは「まさかこんなに早くTCFDがCGコードに入るとは思わなかった」「気候変動開示のノウハウがなく、法定開示となった場合に対応できるか不安がある」といった声が聞かれる。

TCFD : 主要国の金融当局(中央銀行、金融監督当局、財務省)やIMF(国際通貨基金)、世界銀行、BIS(国際決済銀行)、OECD(経済協力開発機構)などで構成される国際的な金融システムの安定を目的とする組織である金融安定理事会(FSB)が設置した組織。TCFDとは「Task Force on Climate-related Financial Disclosures」の略である。TCFDが2017年6月に公表した最終提言は、気候変動リスクに関する情報開示のフレームワーク(枠組み)のグローバルスタンダードになりつつある。

これまでのCGコード改訂は、基本的に企業の実態を踏まえながら進められてきた。その典型例が・・・

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