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収益認識会計基準の適用による「利益」への影響

周知のとおり、2021年4月1日開始事業年度から「収益認識に関する会計基準」(以下、収益認識会計基準)の適用が開始、3月決算会社は既に同会計基準が適用された第1四半期報告書を提出している(収益認識会計基準についての解説は2019年12月3日のニュース「重要会計基準改正解説第二弾 収益認識注記の要否は企業の判断次第」および同ニュース内で引用されているニュースを参照)。当フォーラムでは、収益認識会計基準を早期適用した上場会社30社の2020年度・第1四半期報告書にどのような影響があったのか、調査結果を既にレポートしたところだが(2021年5月14日のニュース「収益認識会計基準の影響、早期適用会社はどう説明した?」参照)、このほど日経225を構成する3月末決算会社(日本基準を適用している115社)をサンプルとして、収益認識会計基準適用後の2021年度・第1四半期報告書について改めて調査を行った。

日経225 : 東証1部上場銘柄のうち取引が活発で流動性の高い225銘柄を選定したうえで算出されることからこう呼ばれる。

収益認識会計基準の適用により変更となった会計処理の項目、変更内容等、社数は下表のとおり。収益認識会計基準の早期適用会社を対象にした前回の調査結果の傾向から大きな変化はなかった。

(注)2020年度第1四半期に収益認識会計基準を早期適用した上場会社30社の調査結果
会計処理の変更項目 変更の内容など 社数
(延べ数)
参考:前回
調査(注)時
の社数
(延べ数)
収益認識時点の変更 例えば以下のような収益認識時点の変更があった。
・出荷基準→検収基準
工事完成基準→進捗度に応じて一定期間にわたり収益を認識
63 18
代理人取引の認識 小売業への影響が大きいと言われてきたが、実際には幅広い業種に影響があった。 47 9
変動対価/顧客に支払われる対価の会計処理の変更 「販売費」として処理していた販促費やキャッシュバックの費用等を売上高から控除するなどの変更。 26 7
有償支給取引の会計処理の変更 買戻し義務を負っている支給品は支給時に売上を計上しない。 13 5
自社発行ポイント等の会計処理の変更 自社発行のポイントは引当金として計上するのではなく、売上高から控除する。 4 2
返品調整引当金の会計処理の変更 予想される返品部分は、販売時に収益として認識しない。 3 1

工事完成基準 : 工事が完成して相手方に引渡しを行った時点で一時に収益を計上する方法を工事完成基準という。これに対し、工事の完成度合いに応じて収益を見積もり計上していく会計方針が工事進行基準である。
代理人 : 財またはサービスを顧客に移転する前に、その財またはサービスの支配を獲得していない場合には、本人ではなく代理人として取扱われることになる。テナントに場所を貸しているに過ぎない百貨店などは代理人に該当する。
変動対価 : 文字通り対価が変動することを意味しており、売上リベートの支払いなどは対価を変動させる要因の1つである。
有償支給取引 : 企業が、対価と交換に原材料等(以下、支給品)を外部(以下、支給先)に譲渡し、支給先における加工後、当該支給先から当該支給品(加工された製品に組み込まれている場合を含む)を購入する取引のこと。
買戻し義務 : 有償支給取引において、支給先によって加工された製品の全量を買い戻すことを支給品の譲渡時に約束していること
返品調整引当金 : 商品の返品による損失に備え計上する引当金

収益認識会計基準の適用により売上高が大幅に減少する可能性があることは既に指摘されてきた(「【役員会 Good&Bad発言集】代理人取引の売上表示」参照)。上表に示した会計処理の変更内容のうち「代理人取引の認識」と「変動対価/顧客に支払われる対価の会計処理の変更」は、売上高は減少させるものの利益に影響を与えないものの代表例だが、利益にも影響を与える会計処理の変更もある。そこで当フォーラムでは、収益認識会計基準の適用が、期首利益剰余金および第1四半期累計期間における税引前利益に与えた影響を調査した。その結果は下表のとおりであった。・・・

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