企業の「総資産」が増加すれば、「利益/総資産」によって計算されるROA(Return On Assets=総資産利益率)は低下し、投資家には「資産を上手く活用できていない(利益を生み出せていない)」というネガティブな評価を受けかねない。これを回避する手法の一つが「リース」の活用だ。日本の会計基準では、リース料は毎期の費用に計上される(すなわち、賃貸借処理)一方、貸借対照表(B/S)には計上しなくてもよい(=オフバランス)ことになっているため、総資産が増えず、ROAの低下も防ぐことができる(*)。
所有権移転外ファイナンス・リース : 「ファイナンス・リース」には、所有権は借り手には移転しないタイプの「所有権移転外ファイナンス・リース」というものがある。「所有権移転外」という言葉のとおり所有権が移転しないという点以外は上述のファイナンス・リースと同じだが、所有権が移転しないという点はオペレーティング・リースと変わらない。そう考えると、所有権移転外ファイナンス・リースは、ファイナンス・リースとオペレーティング・リースの中間に位置付けられると言える。
こうした中、意図的にファイナンス・リースの基準(「支払いリース料総額の現在価値が、見積もり現金購入価額の90%以上」または「リース期間が耐用年数の75%以上」で中途解約もできないこと)を満たさないようにリース契約を仕組んでオペレーティング・リースにするなどの行為が行われてきたが、IFRS(国際会計基準)では、すべてのリースを貸借対照表に(資産および負債として)計上することが求められる。そこで、日本の企業会計基準委員会(ASBJ)は現在、リースに関する日本の会計基準を国際的に整合性のあるものとするため、IFRSをモデルとした会計基準の開発に向け検討を重ねている。リース会計基準が変われば、これまでオペレーティング・リースや所有権移転外ファイナンス・リースを活用してきた企業には大きな影響が及ぶことになる。
こうした企業にとって気になるのは、現行のリース会計基準における「重要性基準」が維持されるのかどうかという点だ。現行の日本のリース会計基準では、以下の場合、「少額リース資産」「短期のリース取引」として貸借対照表に資産計上しないことが容認されており、この結果、リースを貸借対照表に計上するケースが大幅に削減されているという実態がある。
a.所有権移転外ファイナンス・リースのうち、リース契約1件当たりのリース料総額が300万円以下のもの b.リース期間が1年以内の取引 |
この点、ASBJは現在開発中の新リース会計基準においても、「300万円基準」「1年以内基準」という重要性基準を維持する方向で議論している。ただし、これらの重要性基準が維持されても、企業に大きな影響が及ぶことは避けられないだろう。その理由としては主に以下の2つが挙げられる。・・・
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