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スキル・マトリックスの開示に求められるもう一つの意味

周知のとおり、昨年6月に改訂されたコーポレートガバナンス・コード原則4-8(独立社外取締役の有効な活用)により、プライム市場上場会社には3分の1以上の独立社外取締役の選任が求められることとされたが、来月4月4日からの新市場区分移行後には、プライム市場上場会社の多くがこの基準を満たすことが予想される。「過半数」という欧米企業のスタンダードには及ばないものの、日本企業においても一定のガバナンス体制は整ったと言えよう。「まずは社外取締役の数(あるいは割合。以下同)を増やす」というのが、我が国でコーポレートガバナンス改革が本格化した当初から規制当局が描いていたストーリーであり、その思惑はほぼ達成されたことになる。

従来は社外取締役の数を増やすことに重きを置く規制当局に配慮し社外取締役にあまり厳しい姿勢をとってこなかった機関投資家の対応も変化を見せ始めている。社外取締役に求められる役割として最も重要なのが、経営トップを含む経営陣の「指名」と「報酬」の決定プロセスへのコミットメントだ。例えば経営トップが自らの報酬と進退を決めるのは“自己評価”にほかならない。役員の指名と報酬については社外取締役が主導しない限り、投資家の信頼を得ることはできない。逆に言うと、社外取締役はその役割を果たしているのかを、善管注意義務の観点からも投資家に問われることになる。

その問われ方として、株主による社外取締役の選解任、あるいは何か問題が生じた場合には株主代表訴訟により社外取締役に対し損害賠償請求を行うといった余地もある。これは欧米企業では必ずしも珍しいことではない。日本では、みずほフィナンシャルグループおよびみずほ銀行の経営トップが相次ぐシステム障害の責任をとって辞任した際に、問題を放置し続けた指名委員会を構成する社外取締役等の責任を問う声も上がった。こうした流れに対し、社外取締役からは「責任が重すぎる」「我々にはそこまではできない」といった声も少なからず聞かれるが、今後、社外取締役の「実質」が問われる時代が本格的に到来することは不可避となっている。

実は、・・・

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