「マテリアリティ」は「重要性」を意味するCSR用語としてかねてから使われてきたが、財務諸表をはじめとする財務情報を作成する際にもマテリアリティは考慮される。会計基準では下記のとおり「重要性」が定義されている(企業会計基準第24 号「会計方針の開示、会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」第35項)。
CSR : 「Corporate Social Responsibility」の略で、「企業の社会的責任」と訳される。企業を「社会の構成員」として位置付けることで、企業は取引先・消費者・株主・従業員・地域社会などのステークホルダーに対し責任ある行動を行い、社会的課題に応え、ステークホルダーとの間で信頼関係を築いていくべきという考え方。
本会計基準のすべての項目について、財務諸表利用者の意思決定への影響に照らした重要性が考慮される。重要性の判断は、財務諸表に及ぼす金額的な面と質的な面の双方を考慮する必要がある。金額的重要性には、損益への影響額又は累積的影響額が重要であるかどうかにより判断する考え方や、損益の趨勢に重要な影響を与えているかどうかにより判断する考え方のほか、財務諸表項目への影響が重要であるかどうかにより判断する考え方などがある。ただし、具体的な判断基準は、企業の個々の状況によって異なり得ると考えられる。また、質的重要性は、企業の経営環境、財務諸表項目の性質、又は誤謬が生じた原因などにより判断することが考えられる。 |
財務情報で用いられるマテリアリティは「ネガティブスクリーニング」に基づいている。ネガティブスクリーニングとは要するに「重要性がないこと」に着目して物事を取捨選択する手法であり、財務情報については、ある項目がマテリアルでなければ、たとえ会計基準で要求されている会計処理や開示を行っていなくても、投資家など財務諸表の利用者の意思決定に与える影響はないと判断されることになる。
一方、サステナビリティ情報の開示で用いられるマテリアリティは「ポジティブスクリーニング」に基づいている。ポジティブスクリーニングとは、「重要性があること」に着目して物事を取捨選択する手法であり、投資家がサステナビリティやESGの観点から「自社にとって重要な課題は何か?」を特定する際に用いられる。
下表のとおり、財務報告で用いられるマテリアリティとサステナビリティ情報開示で用いられるマテリアリティはその適用場面が異なる。・・・
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