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「ウクライナ関連リスク」の先行開示事例

四半期報告書の廃止については当フォーラムが新聞報道等の1か月以上前から報じてきたところだが(下記のニュース一覧参照)、その中で、四半期報告書の廃止に伴い四半期決算短信における「リスク情報」の開示が強化される可能性が浮上していることは2022年4月11日のニュース「四半期開示のあり方、4月18日のディスクロージャーワーキング・グループで方向性」でお伝えしたとおり。

<四半期報告書の廃止を巡るニュース一覧>
・2022年4月12日のニュース「四半期報告書の廃止が事実上決定
・2022年4月11日のニュース「四半期開示のあり方、4月18日のディスクロージャーワーキング・グループで方向性
・2022年3月29日のニュース「四半期報告書がなくなった場合に予想される変化
・2022年3月8日のニュース「続報・四半期報告書の行方

下記のとおり、四半期報告書では「リスク情報」の開示を求めている。

<四半期報告書が開示を求めているリスク情報>
事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスク(経営成績等の異常な変動、重要な訴訟事件等の発生等投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項)が発生した場合または前事業年度の有価証券報告書(以下、有報)に記載した【事業等のリスク】(開示府令第3号様式が準用する第2号様式の記載上の注意については後述)について重要な変更(変更にはリスクの消滅も含まれる)があった場合に、その旨およびその具体的な内容を分かりやすく、かつ、簡潔に記載する。

これに対し、現状の四半期決算短信ではリスク情報の開示は必須ではなく、記載要領で、サマリー情報の末尾「業績予想の適切な利用に関する説明」に「投資者による将来予測情報の適切な利用を促す観点から、実績を当初の予想値から大きく乖離させるおそれのあるリスク要因の説明を含め、将来予測情報の利用に関する注意文言を分かりやすく記載することが考えられる」と言及されている程度にすぎない(東証の決算短信・四半期決算短信作成要領等44ページを参照)。四半期報告書を廃止した場合、期中におけるリスク情報の変化を開示する場所がなくなるため、四半期決算短信にその役割を担わせようという狙いが、四半期決算短信における「リスク情報」の開示強化案の背景にある。

実際、四半期報告書が存在している現在でも投資家はコロナやウクライナ関連のリスク情報の開示が十分ではないことに不満を抱いており、今後四半期報告書が廃止されれば、四半期決算短信におけるリスク情報の開示の充実を求めてくることは容易に想像できる。コロナについてはパンデミックとなってから既に2年超が経過したこともあり、リスク情報の開示もある程度進んでいるが、ウクライナ関連のリスク情報の開示はこれからという上場会社がほとんどだろう。

そこで当フォーラムでは、「先行事例」として、12月決算の上場会社がウクライナ情勢に関してどのようにリスク情報の開示を行ったのかを調査した。3月決算会社が2022年6月末日までに開示を求められる有価証券報告書を作成するうえでも参考になる点は多い。・・・

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