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有報での開示が見込まれる「男女間賃金格差」の解消に向けたステップ

当フォーラムがいち早く報じてきたとおり、2023年3月期の有価証券報告書より、【従業員の状況】において「男女間賃金格差」「女性管理職比率」「男性育児休業取得率」の開示が義務化されることが確定的となっている()。

こうした中、(2022年)6月13日には、金融庁の金融審議会・ディスクロージャーワーキング・グループが開示事項の見直しをとりまとめた「ディスクロージャーワーキング・グループ報告」を公表した。その中で上場企業にとって喫緊の課題となるのが、海外機関投資家の間でジェンダー・ぺイ・ギャップと呼ばれる「男女間賃金格差」の開示だ。

男女間賃金格差については、有価証券報告書(金融商品取引法)に加え、女性活躍推進法でも動きがある。現行の女性活躍推進法では、複数の女性活躍関連項目の中から1つ以上の項目を選択して開示すればよいことになっており()、男女の賃金格差は開示対象項目となっていないが、当フォーラムの取材によると、近く女性活躍推進法の政令が改正され、「常時雇用する労働者が301人以上の事業主」に対しては、男女の賃金格差の開示が義務付けられることとなる模様だ(開示の選択肢の一つとなるのではなく、開示が強制されることになる)。したがって、たとえ有価証券報告書による開示対象からは外れた子会社でも、男女の賃金格差の開示が求められる可能性が高い。さらに、ディスクロージャーワーキング・グループ報告では、女性活躍推進法で男女の賃金格差を公表していない企業であっても、「有価証券報告書で開示することが望ましい」(報告書15ページを参照)とされている。

 女性活躍推進法では、常時雇用する労働者が301人以上の事業主は、2020年6月1日以降、①女性労働者に対する職業生活に関する機会の提供、②職業生活と家庭生活との両立に資する雇用環境の整備の区分ごとにそれぞれ1項目以上選択して2項目以上の情報を公表することが求められている。女性管理職比率は「①女性労働者に対する職業生活に関する機会の提供」における選択項目の一つで、男女別の育児休業取得率は「②職業生活と家庭生活との両立に資する雇用環境の整備」における選択項目の一つとなっている。2022年4月1日には、当該公表義務の対象となる事業主が常時雇用する労働者が101人以上の事業主にまで拡大された。

男女の賃金格差は男女の平均勤続年数や管理職比率に差異があることが主因とされており、そこからは、企業内で賃金階層における男女の偏在(管理職などの賃金の高い階層には男性が多く、平社員や非正規従業員など賃金が比較的低い階層には女性が多い)とそれを許容している経営陣の姿勢が透けて見えるため注目を集めやすい。今後、上場企業は開示に備え、①「男女間賃金格差」などのデータを算定し、全国平均値などと比較したうえでギャップの“見える”化を図り、その結果を経営陣が共有する、②ギャップの原因を追究し、改善を図る、③一定期間経過後にデータを再算定し、改善の効果が出ているかどうかを検証し、改善計画に反映するというプロセスを繰り返す必要がある。以下、具体的に見ていこう。

まず取り掛かるべきは、・・・

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