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変貌するESG投資の概念

2022年は近年急成長してきたESG投資の発展形と言われる「インパクト投資」に関する議論が深まった1年であったと言えるが(ESG投資とインパクト投資の違いについては2019年2月18日のニュース「インパクト投資とESG投資の違い」参照)、2023年はESG投資の概念が改めて議論される年となりそうだ。

ESG投資 : 「Environmental(環境)」「Social(社会)」「Governance(企業統治)」に優れた企業に投資すること。
インパクト投資 : 社会問題・環境問題を解決することを目的として投資すること

2022年を振り返ると、社会・環境課題の解決やスタートアップを含む新たな事業の創出に資するインパクト投資が、岸田総理が打ち出す「新しい資本主義」の柱となる施策の一つとして注目を浴びた。経団連も「インパクト指標を通じてパーパス起点の対話を促進する」と題する報告書を公表し、より充実した投資家との対話を実現するため、財務情報のみならず、非財務情報であるインパクト指標を併せて示すことを提案している(2022年9月15日のニュース『「インパクト投資」が急速に拡大 注目されるGPIFの動き』参照)。さらに、金融庁に設置されたサステナブル・ファイナンス有識者会議の下には、「インパクト投資等に関する検討会」が設置されるなど(2022年12月6日のニュース「急ピッチで進むインパクト投資の普及に向けた議論」参照)、新自由主義的な資本主義を修正し、社会的起業を応援するというこのポジティブな投資への期待が高まった。

新しい資本主義 : 岸田総理が重要施策に掲げる「成長と分配の好循環」と「コロナ後の新しい社会の開拓」をコンセプトとした資本主義のこと。
インパクト指標 : 事業や活動の結果として生じた、社会的・環境的な変化や効果を示す指標
サステナブル・ファイナンス : ESG投資やグリーンボンドの発行といった「持続可能な社会を実現するための金融」を意味する。
新自由主義 : 1980年代に登場した、国家による福祉・公共サービスの縮小、大幅な規制緩和、市場原理主義の重視する経済思想のこと。英国おける金融ビッグバンや、米国レーガン政権による規制緩和や大幅な減税、日本の中曽根政権による電電公社や国鉄の民営化などは、新自由主義の発想に基づいている。

また、企業(プライム市場上場企業)は、コーポレートガバナンス・コード(CGコード)の再改訂により、気候変動などの地球環境問題への配慮、人権の尊重、従業員の健康・労働環境への配慮や公正・適切な処遇、取引先との公正・適正な取引、自然災害等への危機管理といったサステナビリティを巡る課題はリスクのみならず収益機会にもつながるものであり、これらの課題の検討は中長期的な企業価値向上の観点から行うべき旨が明確化されたことにより、改訂CGコードを踏まえた開示を迫られることとなった。

一方、現在の世界情勢に目を向けると、・・・

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