東証が先月(2023年3月)31日に上場会社に対して通知した要請「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応等に関するお願いについて」が企業をショートターミズムに陥らせる可能性があるのではないかとの懸念が広がっている。また、同通知に盛り込まれた「株主との対話の推進と開示について」と題する東証からの要請事項が、企業に新たなリスクを招く可能性が指摘されている(東証の通知の内容については2023年4月5日のニュース『「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」における要請事項と開示時期』参照)。
ショートターミズム : 目先のリターンばかりを求める「短期志向」のこと。
株主との対話については、そもそもコーポレートガバナンス・コードの「第5章 株主との対話」において基本的な考え方が示されている。要約すれば、そこでは①上場会社が株主との間で建設的な対話を行うこと、②社外取締役を含む取締役と監査役が面談に臨むこと、③株主との建設的な対話を促進するための体制整備・取組みに関する方針を検討・承認し、開示すること、などが求められている。一方、東証の市場区分の見直しに関するフォローアップ会議では、対話に消極的な企業があるとして、2023年1月に公表した「論点整理」において、株主との対話の重要性と推進が改めて指摘されている。
こうした議論を踏まえ、今回の東証の要請では、プライム市場の全上場会社を対象に、上記コーポレートガバナンス・コードに定められた内容に加え、直前事業年度における経営陣等と株主との対話の実施状況等の開示が追加で求められている。対話の実施状況等の開示の例としては、①株主との対話の主な対応者、②対話を行った株主の概要、③対話の主なテーマや株主の関心事項、④株主の意見・懸念の経営陣や取締役会に対するフィードバックの実施状況、⑤取り入れた事項、などが挙げられている。必ずしも全ての項目について開示が求められるものではないとされているが、対話を実施していない上場会社には、コーポレートガバナンス・コードにもあるように株主との対話を促進するための体制整備・取組みの状況の開示を求めている。開示範囲や内容は各社の判断によるとされているため、各社が対話状況の開示に基づき自社の取組みを投資家を含め対外的にアピールできれば良いが、企業にさらなる開示負担を強いるものであることは間違いない。あくまで「要請」ベースであり、ましてやコーポレートガバナンス・コードですらないが、同コードをコンプライしている企業は「開示」という選択をすることになるものと思われる。
これは企業にとって負担増であることに加え、以下の2点に留意する必要がある。
1点目が・・・
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