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のれんの償却問題、「Adjusted EBITDA」を決算短信で開示するという妥協案

M&Aの際には「のれん」を認識するのが通常だが、日本の会計基準では、のれんを20年以内の期間で償却することを求めている。これに対し、IFRS(国際会計基準)ではのれんの償却が求められないことから、決算への影響を考慮し、IFRSを選択する企業もある。しかし、IFRSの適用社数は2023年5月19日時点で277社(適用予定企業・非上場企業を含む)にとどまっている。大手メーカーでは導入が進んでいるが、いくら「全上場企業の時価総額に占める割合 」が大きい(2023年5月19日時点で約46%)と言っても、適用社数の伸び率が鈍化傾向にあることは否めない。

のれん : 企業を買収したり合併したりする際における「支払対価-企業の時価純資産」こと(これがプラスの場合、「正ののれん」という。以下は「正ののれん」を前提とする)。のれんは「財務諸表には表れない企業の価値」と言える。つまり、のれんは投資原価の一部を構成している。このため、そこで日本の会計基準では、のれんについては「20年以内の期間」で償却し、のれんの価値が下がった場合には「減損」を行うことになっている。一方、IFRSおよび米国会計基準では、「のれん」の定期償却は認められていない(減損処理しか認められない)。そこには、利益の平準化を好む日本型経営と、業績好調時にはできるだけ利益を出し、逆に業績悪化時にはすべて“膿”を出すという欧米型経営の発想の違いがある。
20年以内の期間 : のれんの償却年数は最長で20年間とされているが、実際には投資回収期間などを考慮して償却期間が決定される。投資回収期間とは、企業を買収するために支払った対価を、当該企業が生み出すキャッシュ・フローの何年分で回収できるかを指す。

IFRS適用会社数の推移
出典:企業会計審議会第10回会計部会(2023年6月2日)資料 IFRS任意適用の状況(東京証券取引所)
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こうした中、政府の新しい資本主義実現会議がとりまとめ、6月16日に閣議決定された「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画2023改訂版」(以下、改訂版)では、「④ M&Aを促進するための国際会計基準(IFRS)の任意適用の拡大」と題し、下記のとおりIFRSの適用拡大を促している。しかし、IFRS適用社数が伸びていない現状を見ると、・・・

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