東証が2023年3月31日に「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応について」(以下、東証要請)を公表し、プライム市場およびスタンダード市場の上場会社に下記の対応を要請してから4か月が経過した。下図のとおり、東証が「毎年1回以上」の進捗状況に関する分析と開示を求めていることからすると、会社側としては「現状分析」と「具体的な取組み」あたりはそろそろ固めておきたいところだ。
東証要請では「現状分析に用いる指標」として下記のものを例示している。
東証要請の5ページでは、「改善に向けた方針や目標、具体的な取組みや実施時期の開示にあたって、開示を行う書類・フォーマットの定めはありませんが、たとえば、経営戦略や経営計画、決算説明資料、自社ウェブサイト、上場維持基準の適合に向けた計画などの中で示すことなどが考えられます。」としたうえで、「いずれの形式で開示をしている場合でも、投資者における把握のしやすさという観点から、開示を行っている旨やその閲覧方法(ウェブサイトのURLなど)について、コーポレート・ガバナンスに関する報告書の「コーポレートガバナンス・コードの各原則に基づく開示」の記載欄への記載をお願いいたします。」としている。ところが、当フォーラムが各社のコーポレート・ガバナンス報告書(以下、CG報告書)を分析したところ、「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」についての記載が十分でない上場会社が多かったことは既報のとおりだ(2023年7月18日のニュース「CG報告書の改訂記載要領への対応状況と好事例」参照)。
このように、全体的にCG報告書での開示が十分でない一方、適時開示のフォーマットで「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応について」といったタイトルのリリースを積極的に行っている上場会社も散見される。当フォーラムがこれらの事例において「現状分析に用いる指標」として何が用いられているのか、また「具体的な取組み」として何を記載しているのか等を分析したところ、今後「開示」フェーズに入る上場会社にとって参考になる点や課題も見えてきた。
当フォーラムが2023年8月8日現在で「資本コスト」というキーワードを盛り込んだ適時開示を行った13社について、各社のリリースのボリューム(ページ数)、現状分析に用いた指標、具体的な取組みなどを調査したところ、下表のとおりの結果となった。・・・
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