2024年9月13日、企業会計基準委員会(ASBJ)は「リースに関する会計基準」等を公表した。2023年6月22日のニュース『ROAの悪化は確実 上場企業の役員が押さえておきたい「新リース会計基準」が経営に与える影響』でお伝えしたとおり、新たなリース会計基準により、リースの借手(以下、借手を前提)はファイナンス・リース(借入れによる物の購入とみなされるリース)であるかオペレーティング・リース(「物を借りて賃借料を払う」という本来のリース)であるかにかかわらず、すべてのリースを原則として資産計上することが求められる。
ファイナンス・リース : 「支払いリース料総額の現在価値が、見積もり現金購入価額の90%以上」または「リース期間が耐用年数の75%以上」で中途解約もできないリースを指す。
これまで、ファイナンス・リースではリース資産をB/S上の「資産」に計上するとともに、リース債務(未経過リース料)をB/S上の「負債」にそれぞれ計上することが求められてきた(バランスシートに計上するという意味でこれらを「オンバランス」という)。これに対しオペレーティング・リースは、毎期の支払いリース料を費用計上するだけで済み、B/Sには何も計上しなくてもよい(=オフバランス)。オフバランスであれば、ROAの分母が小さくなり、さらに負債も計上しなくてよいといったメリットがあるため、ファイナンス・リースの要件を上手く外したオペレーティング・リースを利用している企業も少なくなかった。小売業や物流業(倉庫)など多数の不動産リース契約を締結している企業をはじめ、オフィスビルを借りている企業は業種を問わず、現行のリース会計基準に基づきオペレーティング・リースとして費用計上してきたリース料を今後は資産(使用権資産)として計上(負債としてリース負債(未経過リース料)も計上)しなければならなくなるため、多くの企業が少なからず影響を受けることになろう。
ROA : Return On Assets =総資産利益率(利益/総資産)。ROAは利益を総資産で除して求めるため、分母である総資産の増加はROAの低下をもたらす。実務上、ROAの利益には「営業利益」もしくは「事業利益」を使うことが多い。これは、総資産に対応する利益は、営業利益あるいは事業利益であるという考え方による。
使用権資産 : 新リース会計基準では、現行の「リース資産」は「使用権資産」となる。「使用権資産」とは、借手が原資産(リースの対象となる資産)をリース期間にわたり使用する権利を表す資産のことをいう。
リース負債 : 新リース会計基準では、科目名が「リース債務」ではなく「リース負債」となる。
公開草案の公表が2023年5月であり、当初の予定では2024年3月までに内容を確定させることになっていた。しかし、リース契約は多くの企業に浸透してきたため、公開草案に対してはリース会社以外からも多くのコメントが寄せられ、ASBJでの議論も時間を要することとなり、公開草案の公表から1年を超える期間を経ての基準公表となった。企業にとって関心の高い適用開始時期については、「最低でも3年程度の準備期間を設けるべきである」「2年が十分な準備期間かどうかについて、対象法人の準備状況等を踏まえて改めて検討すべきである」「最低でも5年程度の準備期間を設けるべきである」といった、適用まで十分な準備期間を求めるコメントが多数寄せられていたが、・・・
このコンテンツは会員限定です。会員登録(有料)すると続きをお読みいただけます。