新リース会計基準が公表され、上場会社各社では新リース会計基準適用時の影響についての検討が佳境に入っている(新リース会計基準の詳細については2024年9月17日のニュース「新リース会計基準が公表、準備期間は約2年半」参照)。現行リース会計基準では借手のオペレーティングリースとして扱われ、オフバランスとされてきた不動産(建物)のリース(*)が、新リース会計基準ではオンバランス(原資産の引渡しによりリースの借手に支配が移転した使用権部分に係る資産(使用権資産)と当該移転に伴う負債(リース負債)を計上する)が不可避になることのインパクトは決して小さくない。とりわけ、日本の会計基準を適用している小売業やサービス業、事業所や倉庫などの不動産(建物)を自社所有ではなく賃借している上場会社はオンバランスにより総資産が膨らみ、ROAが低下する(分母が大きくなるため)だけでなく、リース期間の判定、リース資産の台帳管理の手間や会計処理の工数も増え、影響は甚大だ。
オペレーティングリース : 購入の代替ではなく、「物を借りて賃借料を払う」という本来のリース
オフバランス : 毎期の支払いリース料を費用計上するだけで済み、B/Sには何も計上しなくてもよいこと。
原資産 : リースの対象となる資産
使用権資産 : 新リース会計基準では、現行の「リース資産」は「使用権資産」となる。「使用権資産」とは、借手が原資産(リースの対象となる資産)をリース期間にわたり使用する権利を表す資産のことをいう。
リース負債 : 新リース会計基準では、科目名が「リース債務」ではなく「リース負債」となる。
ROA : Return On Assets =総資産利益率(利益/総資産)。ROAは利益を総資産で除して求めるため、分母である総資産の増加はROAの低下をもたらす。実務上、ROAの利益には「営業利益」もしくは「事業利益」を使うことが多い。これは、総資産に対応する利益は、営業利益あるいは事業利益であるという考え方による。
新リース会計基準では現行リース会計基準の300万円基準という重要性の判断基準が踏襲された(*)ため、リース契約1件当たりの金額が300万円以下であれば、オンバランスを回避できるが、不動産の賃料は一般的に高額であり、リース期間中の支払総額が300万円を超える物件がほとんどであろう。
しかも、新リース会計基準では、借手の「リース期間」は、借手が原資産を使用する権利を有する解約不能期間だけでなく、さらに次の(1)及び(2)の両方の期間を加えて決定することとされている(新リース会計基準31項)だけに、なおさら300万円基準を超えやすい。
(1) 借手が行使することが合理的に確実であるリースの延長オプションの対象期間
(2) 借手が行使しないことが合理的に確実であるリースの解約オプションの対象期間
不動産(建物)の賃貸借契約は、契約期間が2年以内で解約不能期間はそれよりも短い(例えば半年前に解約予告をすれば解約できる)ことが多いものの、実際には契約を更新するケースが大半となっている。そのため、更新しないことが確定していない限り、「借手が行使することが合理的に確実」な期間が当初の解約不能期間に加わり、「リース期間」を長めに判定せざるを得なくなる。すなわち、賃料が安い物件であっても「リース期間」が長めに判定されることにより300万円基準を超えてしまい、オンバランスが必須となりかねない。これに対し、経済界からは強い反発の声が上がっていた。
そこで新リース会計基準に導入された例外規定が、・・・
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