印刷する 印刷する

もう一つの東証要請「株主との対話の推進と開示」の現状

東証は2023年3月31日に要請した「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」について、対応を開示している企業の一覧表を定期的に公表し、さらには開示内容のアップデート日の明示を要求するなど、要請の実現に向けた施策を矢継ぎ早に講じてきた(2024年10月9日のニュース「東証の開示企業一覧表、【検討中】が半年を過ぎると“非開示”扱いに」参照)。日本企業のコーポレートガバナンス改革の実効性向上において、同要請がいかに重要視されているかが分かる。

その一方で、同時に要請された「株主との対話の推進と開示」については、2023年10月11日に開催された「市場区分の見直しに関するフォローアップ会議」(第12回)で、「今後の取り組み」が議論されて以降、特段のアクションは講じられていない。第12回で議論された「今後の取り組み」案は、東証の説明資料によると以下となっており、専ら東証による情報発信が取り組みの中心に据えられている。

企業の取り組みの好事例の紹介 ● 企業の取り組みを紹介(経営者インタビュー、セミナー等)
・ 経営者が率先して対話にコミットしている企業
・ 対話による気付きを企業価値向上に活かしている企業
・ 対話の前提となる経営情報の開示やIR活動に積極的に取り組み、投資家へのアピールを行っている企業
※ 本要請の趣旨・留意点を改めて上場企業に周知
→ 投資家からの対話の申し込みがあった場合には真摯に対応
→ 株主との対話の実績がない場合は、体制整備や情報開示・IR活動の拡充を通じた投資家へのアピールなどの取り組みを開示
投資家の目線の紹介 ● 実際の投資家の声を紹介(インタビュー、セミナー等)
・ 対話・エンゲージメントを実施する際の目線
・ 企業に求める情報開示・IR
投資家へのメッセージの発信 ● 機関投資家に対しても、今回の要請の趣旨を周知し、積極的に対話をリードしてほしい旨を発信
その他 ● 企業と投資家の接点作り 等

同要請に対応した開示状況は、2023年8月29日開催の「市場区分の見直しに関するフォローアップ会議」(第11回)において、3月期決算上場企業(1,212社)の「34%(416社)が開示」と報告されているが(同日に提出された東証の説明資料「株主との対話の推進と開示」に関する企業の対応状況とフォローアップ」1ページ参照)、それ以降は特段の報告は行われていない。これに対し、「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」については月次で報告されており、2024年7月末時点で何らかの対応を開示済(検討中を含む)の企業の割合は、プライム市場では84%に達している(2024年9月10日のニュース「東証が「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」を踏まえた今後の施策を公表、上場企業数の減少も厭わず」参照)。

そこで当フォーラムでは、直近1年間に東証上場企業が提出したコーポレートガバナンス報告書で、「株主との対話の実施状況」「株主・投資家との対話の実施状況」について開示している事例を調査した。その結果、・・・

このコンテンツは会員限定です。会員登録(有料)すると続きをお読みいただけます。

続きはこちら
まだログインがお済みでない場合は ログイン画面に遷移します。
会員登録はこちらから