上場会社における「政策保有目的での株式保有」は相互持ち合いを通じた“緩い”議決権行使による経営者保身の手段として用いられがちであり、議決権行使の空洞化や資産効率の悪化を招く。そこで、コーポレートガバナンス・コード(以下、CGコード)原則1-4では下記のルールを設け、コーポレート・ガバナンス報告書による開示等を求めているのは周知のとおりだ。この開示をきっかけに、機関投資家との対話において、政策保有株式を縮減するようプレッシャーを受けたという上場会社は少なくない。
上場会社が政策保有株式として上場株式を保有する場合には、政策保有株式の縮減に関する方針・考え方など、政策保有に関する方針を開示すべきである。また、毎年、取締役会で、個別の政策保有株式について、保有目的が適切か、保有に伴う便益やリスクが資本コストに見合っているか等を具体的に精査し、保有の適否を検証するとともに、そうした検証の内容について開示すべきである。 上場会社は、政策保有株式に係る議決権の行使について、適切な対応を確保するための具体的な基準を策定・開示し、その基準に沿った対応を行うべきである。 |
また上場会社は、コーポレート・ガバナンス報告書とは別に有価証券報告書でも政策保有株式の保有株数等を開示することが求められている。その趣旨は、保有株数等の開示を通じて政策保有株式の縮減を促すことにある。
もっとも、現行の有価証券報告書の開示ルールでは、政策保有目的株式であれば保有株数の開示が求められるが、純投資目的の保有であれば保有株数の開示を免れることになる。そのため、保有目的を政策保有から純投資に変更した場合、変更年度においては変更した株数を確認できるものの、翌年度以降、株数が開示されなくなるという問題があった。この“抜け穴”を利用して一部の上場会社で見られたのが、「政策保有株式の保有目的を純投資目的に変更する」という動きだ。実際に純投資目的で運用しているのなら問題ないが、実態としては何も変わっていないケースが少なくない。こうしたいわゆる「保有株ウォッシュ」はコンサル会社等が指南して実施されるケースもあるという(後述。また、「保有株ウォッシュ」は【役員会 Good&Bad発言集】保有株ウォッシュ も参照)。
そこで金融庁は保有株ウォッシュを封じるため、・・・
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