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平均給与増減率の開示が企業に迫る対応

企業には物価上昇を上回る賃上げが期待される中、令和8年度税制改正では大企業向けのいわゆる“賃上げ促進税制”が廃止される。これは、「税金が安くなるから」という理由で賃上げをする段階から、企業の持続的成長のため自発的に賃上げ(人的資本投資)をする段階へと移行すべき、との考えに基づくもの。その一方で、政府は「開示」の枠組みを通じて賃上げを促そうとしている。


賃上げ促進税制 : 継続雇用者の給与総額が前年度より一定率以上増加した企業を対象に、増加額の最大25%を法人税から控除する制度。

2025年12月10日の 【特集】 ~ SSBJ 基準が義務化、人的資本開示で新たな展開も~ 令和7年・開示府令改正案のポイント【後編】 でお伝えしたとおり、金融庁は有価証券報告書の開示内容を定める「企業内容等の開示に関する内閣府令」を改正し、2026年3月31日以後に終了する事業年度に係る有価証券報告書(以下、有報)から「従業員の平均給与の対前年比増減率」の開示を求める方針だ(金融庁案はこちらを参照)。現在でも、従業員の平均給与そのものは有報の開示項目であり、二期間の数値を比較すれば対前年比増減率を算出することは理論上可能ではあるが、二期間の有報を参照する手間が生じる。逆に言うと、これが有報における独立した開示項目として明示されれば、企業間の比較可能性は飛躍的に高まる。その結果、投資家にとどまらず、自社の従業員や労働市場における転職希望者、さらには将来の労働力である学生らによる企業選別の目は一層厳格化することになろう。企業としては、平均給与の対前年比増減率を事実上の KPI として管理せざるを得なくなる可能性が高い。

ただ、平均給与は本来、一定の目的をもって能動的に管理することに適した指標とは言い難い。というのも、平均給与は給与総額と従業員数という単純な関係で算出される結果指標()にすぎず、特に従業員数の少ない企業ほど、採用や退職といった個別要因による人員構成の変動の影響を強く受けるからだ。例えば、・・・

* 平均給与は賞与も含む給与総額と従業員数だけで決定されるため、どれだけ職場環境の改善や福利厚生制度の充実といった「給与以外の手段」で従業員満足度の向上に取り組んだとしても、その効果は平均給与には反映されないという問題もある。

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