会社法上、株式会社は「株主を、その有する株式の内容及び数に応じて、平等に取り扱わなければならない」(同法109条1項)とされている。これが「株主平等の原則」である。ここで重要なのが、「数に応じて」とされている点だ。株主平等の原則は、保有する株式数にかかわらず、すべての株主に同じだけの影響力を保障するものではない。単元株式制度の下、東証に上場する内国株式は売買単位(=一単元)が100株に統一されており、原則として一単元につき一個の議決権が認められる。したがって、保有する議決権が少ない少数株主の意見は、株主総会の決議結果を左右しにくい。これは株主平等の原則に反するものではなく、まさに「持株数に応じて」株主の権利が定まる結果である。
単元株式制度 : 一定数の株式を一単元とし、原則として一単元につき一個の議決権を認める制度。東証上場の内国株式では、一単元(売買単位)は100株に統一されている。
しかし、多数決によって議案が可決されたからといって、少数株主の反対を軽視してよいわけではない。とりわけ、上場子会社や支配的な株主を有する上場会社など、議決権の相当割合を握る大株主が存在する会社では、親会社や大株主と少数株主との間に構造的な利益相反が生じやすいが、多数決の原則により会社提案の取締役選任議案が容易に可決され、少数株主の意思が封じ込められやすい。
2026年2月9日のニュース「社内ガバナンス方針と矛盾する株主提案の行方」で取り上げた日本和装ホールディングスのケースは、まさにその典型といえる。少数株主の利益を適切に保護することは、証券市場の公正性と信頼を支える前提となる。
こうした問題意識を踏まえ、東証は2026年3月27日、「少数株主保護に関する上場制度の見直し等について」の規則改正案を公表し、パブリック・コメント(以下、パブコメ)に付したところだ。規則改正案では、40%以上の議決権を保有する大株主等が存在する上場会社(以下、対象企業。市場区分は問わない)に対し、会社提案の取締役選任議案について、少数株主の賛成割合等の開示を求める制度が提案されていた(規則改正案の内容については2026年4月9日のニュース「支配株主である創業者の経営復帰に対する少数株主の判断」を参照)。
東証はパブコメを経て、同年7月3日に規則改正の内容を確定した。これにより、対象企業は、各取締役選任議案(会社提案議案に限る。また、監査役選任議案は対象外。役員報酬の承認議案や剰余金の配当議案なども対象外)について、少数株主の賛成、反対、棄権の議決権数および賛成割合を、株主総会後遅滞なく開示しなければならないこととなった。少数株主から50%超の賛成票を得られなかった議案があった場合には、「少数株主の反対理由の把握に向けた取締役会における対応方針」も開示し、その後6か月以内に、株主との対話の実施状況、反対理由の概要、追加的な施策の必要性や内容を公表しなければならないこととされた(施行日は2026年7月10日。2026年12月1日以後に終了する事業年度に係る定時株主総会の日から適用)。
少数株主から50%超の賛成票 : 「少数株主の50%超」という水準について、東証は「いわゆるマジョリティ・オブ・マイノリ ティ要件(支配株主などの利害関係者を除く少数株主の過半数の賛成を求める考え方)を意識したもの」と説明している。
確定版に基づき、改めて制度の全体を整理すると次のとおりである。規則改正案からの変更点には特に留意されたい。・・・
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