近年、機関投資家の間で、企業の投資価値を測る評価項目としての地位を確立しつつあるのがESG(環境、社会、ガバナンス)だ。ESGとは財務諸表には示されない「非財務情報」であり、日本では開示が義務付けられているわけではない。
これに対し、海外ではESG情報の開示義務化が広がりつつある。その内容や方法は様々で、地域ごとに特色がある。それぞれの地域の最近の動向をまとめてみよう。
<欧州>
EU理事会は2014年9月、EU域内の大企業に対して非財務情報(および取締役会構成員の多様性に関する情報)の開示を義務づける指令を承認した。ここでの非財務情報とは、環境、社会、従業員に関する事項、人権の尊重、腐敗や贈収賄の防止などを指す。これらの非財務情報を開示しない場合はその理由を説明せよという「Comply or Explain」アプローチを採用している。同指令を受け、加盟国は「2年間」の猶予の間にこれを自国の制度として実施する必要がある。
英国では、既に2013年4月からロンドン証券取引所上場企業に対し、GHG(Greenhouse Gas=温室効果ガス)排出量の報告を義務化している。また、2013年10月の会社法改正により、上場企業に「ストラテジック・レポート」の作成を義務付けた。同レポートでは、重要なリスクや将来見通しの分析、戦略、ビジネスモデル、環境、社会、コミュニティ、人権に関する情報、コーポレートガバナンスに関する重要情報の開示が求められている。このストラテジック・レポートの内容は、IIRC(国際統合報告評議会)が「企業がどのように持続的な成長を実現しようとしているのかについて報告するもの」と定義付ける統合報告書(2014年8月の課題「統合報告書」参照)に非常に近いものだと言える。
<米国>
米国証券取引委員会(SEC)は2010年2月、制度開示書類における「気候変動情報開示に係る解釈指針」を公表している。また、2012年8月には紛争鉱物開示規則を策定した。これにより、米国の上場企業は、タンタル、タングステン、スズ、金が製品に含まれる場合には、それがコンゴ民主共和国やその周辺国で武装集団の資金源となっていないかどうかを調査し、その結果を開示することが義務付けられている。
直近で注目を集めているのは、・・・
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