周知のとおり、スイス中央銀行は先月(2014年1月)15日、それまで「1スイスフラン=1.20ユーロ」としていた為替レートの上限を突如撤廃した。為替市場はこれに直ちに反応し、スイスフランはユーロに対して暴騰、このところ0.95ユーロ前後で推移している。市場関係者でさえ予想できなかった今回の事態は、海外事業の割合が増えている日本企業にとっても、為替リスクへの対応の難しさを再認識させたと言えるだろう。
もちろん、多くの企業が為替予約や通貨スワップなどのデリバティブを活用して、為替リスクをヘッジしている。その一方で、ヘッジ会計を採用している上場企業は少ないのが現状だ。
為替予約 : 異なる通貨を、将来の一定時期に、一定の金額で交換する約束のこと。
通貨スワップ : 一定期間にわたり異種通貨の利息支払を交換し、さらに、期間の最後に当初に合意した為替レートで、元本も交換する約束のこと。
一口に「ヘッジ」と言っても、これには(1)為替変動、金利変動、価格変動等を伴う資産や負債などの「ヘッジ対象」と、(2)これらの変動による損失リスクをヘッジするために行うデリバティブ取引などの「ヘッジ手段」がある。
会計の世界では、ヘッジ対象もヘッジ手段も毎期時価評価しなければならないのが原則となっている。本来、ヘッジ対象のためにヘッジ手段があるのだから、両者は連動していなければならないはずだが、例えば近い将来に見込まれる外貨建ての売上や仕入に対して為替予約を行う場合には、ヘッジ対象が存在しないうちにヘッジ手段を保有することになるため、売上や仕入が生じる前に決算を迎えると、売上や仕入を計上する前に「為替予約の評価損益」のみが損益計算書に先に計上されてしまうというおかしな現象が起きる。そこで、「ヘッジ対象」と「ヘッジ手段」の損益を同時期に計上させようという仕組みがヘッジ会計だ。期末時点での時価を計上する(=時価評価)という会計の原則からすれば、ヘッジ会計は時価評価の例外と言える。
ただ、ヘッジ会計は「例外」であるがゆえに、・・・
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