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監査等委員会設置会社への移行だけでは足りないもの

 改正会社法で導入された新たな機関設計「監査等委員会設置会社」に移行する上場企業が相次いでいる。今年(2015年)2月18日のニュースでは6社が監査等委員会設置会社への移行を表明したことをお伝えしたところだが(「6社が監査等委員会設置への移行を表明」参照)、それから3か月経った現在、その数は150社に迫る情勢となっている。6月に株主総会を開催する企業の場合、もっとも遅くて2週間前に株主総会参考資料等を送付すればよく、その直前に取締役会で監査等委員会設置会社への移行を決議するケースもあると予想されるため、さらなる上積みも見込まれる。

 監査等委員会設置会社への移行が相次いでいる背景の1つにあるのは、周知のとおり、社外取締役の選任問題だ。5月1日に施行された改正会社法は、社外取締役を設置していない場合に「相当でない理由」の説明を義務付け(第327条の2)、6月1日から実施されるコーポレートガバナンス・コードでは、独立社外取締役を少なくとも2名以上選任すべきとしている(原則4-8)。社外取締役がゼロの企業にとって、現任の社外監査役を横滑りさせることで複数の社外取締役を確保できる監査等委員会設置会社への移行は魅力的に映るはずだ(2015年3月20日のニュース「監査等委員会設置会社への移行で監査役の処遇は?」参照)。

 また、コーポレートガバナンス・コードの原則3-1では、役員の指名・報酬について「決定・指名に当たっての方針と手続」を開示すべきとしているが、「社外取締役ゼロ」の取締役会でこれらを議論している限り、説得力に乏しい。一方、「社外取締役を含む監査等委員が複数いる取締役会」で議論したとなれば、受け止める側(投資家)の印象も違ってこよう。改正会社法が、監査委員会に人事・報酬の「意見陳述権」を認めていることも(361条6項)、説得力を補強してくれるだろう。

 監査等委員会設置会社への移行のメリットは、社外取締役の確保だけではない。監査等委員会設置会社に移行することで、・・・

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