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「少数株主」としての機関投資家の思考パターン

「少数株主」というと、文字通り「(相対的に)少数の株式を保有している株主」というイメージがあるかもしれないが、実はそうとは限らない。確かに少数株主には、多数派株主に対峙する存在としての「少数派」の株主という意味もあるが、議決権の50%超を確保することなく実質的に経営権を握っている株主がいる会社において、経営権を握っている株主以外の株主を指して「少数株主」と言うこともある。この場合、少数株主が連携すれば理屈の上では「多数派株主」になるが、多くの投資家の意見を束ねるのは容易ではない。だからこそ、議決権の50%以上を確保していない株主に実質的に経営権を握られる上場会社が存在しているわけだ。

会社法にも「少数株主」という概念があるが、これは、議決権の一定割合や一定数を持っていることを条件に、株主総会招集権、株主提案権、会計帳簿閲覧権、取締役等の解任請求権といった権利(=少数株主権)を行使することを認められている株主を指す。会社法上、少数株主は「何事も多数決で決まるという多数決原理を修正してでも、経営権を握っている株主の横暴から守るべき存在」として扱われている。上述のとおり、会社法では、少数株主権は議決権の一定割合や一定数を持っていることが行使の条件になっている。逆に言うと、それに満たない議決権しか有していない株主は少数株主権を付与して保護する対象としていない。

さらに、「少数株主」という言葉は会計の世界でも出てくる。具体的には、連結決算において、「100%子会社以外の連結子会社」の株式を保有している、「親会社以外」の株主を指す。もっとも、例えば支配力基準により連結対象となった子会社のように、親会社よりも持分を有する“少数株主”も存在し得ることから、最近会計基準が改正され「非支配株主」という言い回しに改められたところだ(平成27年4月1日以降に開始する事業年度より適用される「企業結合に関する会計基準」の120項を参照)。

支配力基準 : 議決権を50%超保有しているかどうかのみならず、事実関係によって「他社の経営を実質的に支配しているか否か」を判断すること。例えば親会社が資金援助をするとともに、役員の過半数を送り込んでいる場合には、たとえ議決権が50%以下でも連結子会社となる。

このように一口に「少数株主」と言ってもさまざまな意味があり得るが、株式市場で存在感が抜きん出ている機関投資家も、意外なことに「少数株主」に該当する。というのも、・・・

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