上場会社の「実質株主」として存在感を増す機関投資家だが、「実質」という言葉のとおり、機関投資家は信託銀行等を通じて株式を保有するのが通常であり、多くの場合、名義上の株主は信託銀行などのカストディアン(投資家に代わって株式の管理(カストディ)を行う機関)となっている。このため、機関投資家が株主総会の場で議決権を行使することは基本的にはない。
株主が「代理人」を株主総会に出席させ、議決権を行使させることは会社法上認められているものの(会社法第310条1項)、定款において代理人を「株主」に限定することが可能(昭和43年11月1日最高裁判決)。つまり、名義上の株主でない機関投資家が株主総会に出席して議決権を行使するためには、少なくとも1株は機関投資家名義で株式を取得する必要があるわけだ。
こうした現状の中、コーポレートガバナンス・コードには、機関投資家自らによる議決権行使を促す下記の原則が入っている。
補充原則 1-2⑤ 信託銀行等の名義で株式を保有する機関投資家等が、株主総会において、信託銀行等に代わって自ら議決権の行使等を行うことをあらかじめ希望する場合に対応するため、上場会社は、信託銀行等と協議しつつ検討を行うべきである。 |
また、政府の成長戦略には、「名義株主以外のグローバルな機関投資家等が、株主総会に参加する上での企業の基本方針作りを円滑化するため、関係団体等においてガイダンスを本年末までに策定すること」との記述が盛り込まれたところだ(「日本再興戦略」改訂2015の45ページ イ)の「さらに・・・」~参照)。
これを受け、・・・
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