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社外取締役候補者のトレンド

 コーポレートガバナンス・コード補充原則4-11②では、社外取締役や社外監査役を兼任する社数を「合理的な範囲」にとどめるべきとしているが(関係者の間では「2社」と言われている。2015年3月10日のニュース「社外役員の兼任社数の上限は?」参照)、この原則は、社外役員に「どれだけの時間を会社のために費やすことが出来るのか?」を問うものと言える。

 社外取締役に関して言えば、多くの場合、およそ月1回の取締役会への出席とその事前説明を受ける時間に限られているのが実状だろう。こうした中、ある大手メーカーの社外取締役(ベンチャー企業社長、他社の社外取締役の兼任はなし)から、「自分の業務時間全体の2割を社外取締役としての時間に割いている」という話を聞いた。「業務時間全体の2割」というのは日本企業の社外取締役の実態からかけ離れていると思われるが、「欧米ではそのように言われているので実践している」とのことだった。

 全体の業務時間は人によって異なるが、業務執行を行わない社外取締役が業務全体の2割を社外取締役としての職務に充てるということになれば、相当丁寧な会社の現状分析や全社的な課題への目くばせが可能になるはずだ。

 コーポレートガバナンス・コードが求める「2名以上」の独立社外取締役をいまだ選任できていない上場会社が少なくないように(2015年8月31日のニュース「機関投資家が渋い顔をした社外取締役候補の例」参照)、日本においては社外取締役の候補者のストックが必ずしも十分ではない。こうした中、既に他社の社外取締役を務める者や著名人の起用に走る企業は多い。確かにこうした人物は能力や経験値の高さ、社外取締役として期待される役割などを説明しやすいという側面はあるものの、同時に投資家から「社外取締役としての職務に使える時間が短く、役割を十分に果たせないのでは?」「単なる“お飾り”として形式的に任命されているのではないか?」といった疑念を抱かれがちだ。実際、著名人や兼任社数の多い社外取締役の話題はしばしば機関投資家の間で上がっており、このことは、社外取締役の選任における投資家の関心が形式的な要件よりも実質面に移行しつつある・・・

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