伊藤レポートが企業の目標とすべきROEを「8%」とし、議決権行使助言会社のISSが過去5年の平均ROEが「5%」に達しない企業の経営トップ(社長、会長)である取締役選任議案には反対を推奨すると明言していることなどから、このところ多くの企業が“ROEの水準”を気にするようになった。
ROE : Return On Equity(株主資本利益率)=当期純利益÷自己資本(株主資本)
さらに追い打ちをかけるように、12月16日に決定された2016年度税制改正大綱では、ROEをベースに算定された役員報酬にも損金算入の道が開かれることになったため(2015年12月11日のニュース「ついに日本でも株式報酬の支給が可能に!」の一番最後の段落参照)、役員報酬の額がROEに連動するケースも増えて行くだろう。つまり、ROEの水準は企業にとっての課題であるだけでなく、役員自身の収入にも直接影響を与えることになるわけだ。
ただ、株主側に立つISSが掲げるROEが「株主が求めるROE」かというと、そうとは言えない。ISSなどの議決権行使助言会社が設定しているROEは“議決権行使のための目標ROE”であり、株主資本コストとして最低限考えられる数値を挙げているに過ぎないからだ(「株主資本コスト」の詳細は後述)。となると、伊藤レポートで述べられている8%かというと、それも違う。そもそも、株主が求めるROEは・・・
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