金融庁が昨年(2015年)9月に設置した「スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議」は現在、中間報告のとりまとめに向け議論を重ねているが、その中で強調されているのが「形式」から「実質」への脱皮だ。世間を騒がせた東芝事件も、まさに形式だけのコーポレートガバナンスが招いた事態と言える。同会議の委員からも、「東芝の問題というのは、実は実質論として日本企業のガバナンスが抱えていた、ある意味、非常に根深い病巣みたいなものが顕在化した事案」との発言が出ている。
東芝は法令(当時の商法特例法)の改正により委員会設置会社(現「指名委員会等設置会社」)という機関設計が認められた2003年4月にこれに移行したが、委員会設置会社の形式的な要件は満たしていても、実質的にはガバナンスが機能していなかったと指摘する専門家は少なくない。日本のコーポレートガバナンス・コードが参考にした英国のコーポレートガバナンス・コードにおいて“必須4条件”と言われる条件に当てはめて考えてみよう。
商法特例法 : 会社の規模に応じた規制や手続、制度を定めた法律。その内容が2006年5月1日に施行された会社法に盛り込まれたことに伴い、廃止された。
第一は「チェアマン(取締役会議長)とCEOの分離」だ(英国コーポレートガバナンス・コード9ページ A.2.1)。東芝の取締役会議長は現在(2016年1月)は社外取締役(資生堂の前田新造相談役)が務めているが、以前は定款で「取締役会議長は会長が務める」こととされており、「チェアマン=CEO」となっていた。
第二の要件が・・・
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