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シャープ買収に見るM&Aにおける社外取締役の役割

 産業革新機構(機構)の出資を受け入れる方針だったシャープが一転、台湾の鴻海精密工業(鴻海)による買収案を採用する方向となった。外資に対する経営陣の心理的な抵抗感から、機構案による「日の丸連合」が選ばれる可能性が高いと思われた中でのシャープの選択は、他の日本企業の経営陣にとっては意外感があるかもしれない。

 ただ、M&Aが活発な米国に目を向けると、「有利な買収提案を選ばなければならない」という至極当然な原理原則が、「レブロン事件」における司法判断によって確立している。レブロン事件とは、食品会社パントリーブライドのロナルド・ペレルマン社長が、化粧品大手レブロン社に対し、現金による全株式の買収提案を仕掛けた事例。ベレルマン氏は複数の大型買収を手掛けた実業家で、グリーンメーラーとは違って経営の細部まで関わる意思を持っていた。本件においても、当初は友好的なM&A提案として双方が交渉のテーブルに着いたものの話がまとまらず、敵対的買収へと転じた。レブロン社は投資会社をホワイトナイトとする対抗措置を講じたが、裁判所はこれを違法と判断したため、最終的にペレルマン氏による買収が成功した。判決(1986年)では、・・・

グリーンメーラー : “乗っ取り屋”と呼ばれる投資家のこと。短期的な利益を目的に特定企業の株式を市場で買い集め、プレミアムを乗せたり株価を吊り上げたりしたうえで、当該企業に株式の買取りを求める手法を使うため、1980年代の米国では「企業に対する脅迫」として強い批判を浴びた。グリーンメールとは、ドル紙幣を意味する「グリーンバック」と恐喝を意味する「ブラックメール」を組み合わせた造語である
ホワイトナイト : 敵対的買収を仕掛けられた際に、当該買収者に対抗して、友好的な買収を提案してくれる会社等のこと。白馬の騎士(ホワイトナイト)に例えてこう呼ばれる。通常は、敵対的買収者よりも高い価格で株式を買い取るか、第三者割当増資を引き受けることになる。

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