日本企業のコーポレートガバナンス・改革に注目するグローバル投資家の大きな関心事の1つがCEO人事だ。ある機関投資家のトップは、これまでの日本企業におけるCEOの選出プロセスが経営そのものに与える“悪影響”を懸念する。
従来、日本企業では、現CEOが後継者を部屋に呼び、そこで次期CEOに内定したことを伝えるというように、現CEOが単独で(場合によっては、相談役等を加えて)次期CEOを選出するということが少なからず行われてきた。株主に対しては事後的に選任理由が知らされるが、そのプロセスについての説明と透明性は不十分と言わざるを得ない。株主は議決権行使を通じて選任に反対することは可能であるが、その前段階で適任者をCEOに選ぶことはできない。
機関投資家が現CEOによる次期CEOの決定を好ましく思わないのは、このようなプロセスで選ばれた後任のCEOは、自分を選んだ前任のCEO(その多くは会長、相談役等になる)に気兼ねして、リーダーシップを発揮することが困難になる恐れがあるからだ。特に構造改革が求められる場面では、前CEOの戦略を否定しなければならない。どんなに優秀なCEOであっても、会長の顔色をうかがいながらでは大胆な改革は難しい。
そこで期待されるのが「指名委員会」の役割だ。指名委員会によって選ばれた次期CEOは、前CEOの呪縛にとらわれることなく、自由な経営を行うことができる。言い換えれば、指名委員会によってCEOのリーダシップが向上することになる。次期CEOが責任を負うべき対象は「株主」であり、前任のCEOではない。この株主から経営の監督を委任されているのが取締役会であることを踏まえれば、取締役会の中に委員長をはじめメンバーの過半数が社外取締役から構成される指名委員会を設置することは、コーポレートガバナンスの観点からは必須となりつつある。会社法上、指名委員会は指名委員会等設置会社にのみ設置が義務付けられているが、監査役会設置会社や監査等委員会設置会社が任意で指名委員会を設置するケースも増えつつある。
とはいえ、機関投資家の間では・・・
このコンテンツは会員限定です。会員登録(有料)すると続きをお読みいただけます。