マイナス金利の導入で長期金利が下落したことを受け、固定金利による新規借入れを検討したり、既存の変動金利の借入金に対して金利スワップ(*)をかけることで金利の固定化を検討したりしている企業も少なくないだろう。固定金利の方が利益やキャッシュフローの安定が見込めるからだ。
通常は、固定金利による借入れよりも、変動金利により借り入れたうえで別途金利スワップ(「変動金利を受け取り、固定金利を支払う」金利スワップ)をかけた方が、トータルの支払額を低く抑えることができる。これは、金利スワップ契約の方がマーケットによるメカニズム(市場を通じた金利調整)が働きやすいためである。
ところが、マイナス金利の影響により、この常識が覆される可能性が高まっている。もしマイナス金利の影響を受けてTIBORなどの基準金利もマイナスとなり、マイナス幅がスプレッド(利ザヤ)を上回ると、企業側は金融機関から「変動金利を受け取る」はずが逆に「変動金利を支払う」ことになってしまう(図1の金融機関から企業への矢印③が、図2では逆転して企業から金融機関への矢印に変わっている)。
基準金利 : 金利スワップ契約における変動金利算定の際に基準となる金利。例えば1か月物のTIBORを基準金利にして、それにスプレッド(利ザヤ)を乗せて適用金利が決まる。
もちろん、変動金利による借入金の利率がマイナス金利の影響によりマイナスとなったことを受け、銀行が企業に対して利息を支払ってくれれば、何ら問題はない(図1の銀行から企業への矢印①が、図2では逆転して銀行から企業への矢印に変わっている)。金融機関に支払った利息は銀行から受け取る利息と相殺され、金融機関に対する固定金利による利息の支払いのみが残るからだ。すわなち、企業における金利スワップ契約の目的は達成できたことになる。
しかし、いくらマイナス利息になったからと言って、銀行が企業に利息を支払うということは、現実には考えにくい。金銭消費貸借契約にマイナス金利についての条項がない場合、当事者の合意内容でマイナス金利の取扱いを解釈することになるが、銀行としては2月19日に・・・
このコンテンツは会員限定です。会員登録(有料)すると続きをお読みいただけます。