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D&O保険の補償額引上げ相次ぐ 「任意の委員会」の定義への疑問も

2016年2月26日のニュース「株主代表訴訟補償特約保険料の会社負担、給与課税不要に」でお伝えしたとおり、D&O保険のうち株主代表訴訟をカバーする「株主代表訴訟補償特約」の保険料を会社が負担した場合でも給与課税が行われないことになった。役員に保険料を負担させる必要がなくなったことを受け、補償額の引上げを検討する企業が相次いでいる。また、これまで日本企業に対し損害保険会社が用意する補償限度額は10億円程度だったが、ある国内損保はこれを欧米企業並みの100億円に増額するという。もちろん、損保が補償限度額をいくらに設定するかは企業側の業績や規模にもよることになるが、30~50億円程度に補償額を設定する企業は今後相当数出て来るものとみられる。

損保各社は既に国税庁が示した給与課税の免除要件をクリアするための対応に動いている。現状のD&O保険は、会社法上の問題(2015年7月13日のニュース「D&O保険料の会社負担は可能か?」参照)をクリアするため、「普通保険約款」と「株主代表訴訟補償特約」に分かれており、普通保険約款等には「株主代表訴訟敗訴時担保部分を免責する」旨の条項が設けられているが、会社法上の問題がなくなったことで今後はこのような区分も不要となる。そこで、国税庁が先月(2016年2月)24日に公表した「新たな会社役員賠償責任保険の保険料の税務上の取扱いについて(情報)」という文書では、「普通保険約款等を変更するまでの暫定的な取扱い」として、「普通保険約款等において設けられている株主代表訴訟敗訴時担保部分を免責する旨の条項を適用除外とし、普通保険約款等の保険料と株主代表訴訟敗訴時担保部分の保険料が一体と見なされる旨の特約を追加で付帯」することを求めている。損保各社はこの特約の開発を進めており、遅くとも今月内にはリリースする模様。

また、国税庁の文書では、給与課税を行わない条件として、(1)取締役会の承認、(2)社外取締役が過半数の構成員である任意の委員会の同意又は社外取締役全員の同意の取得――の2つの要件をともに満たすことを求めているが、このうち企業のみならず損保からも疑問が指摘されていたのが(2)の「任意の委員会」の定義だ。・・・

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