昨年(2015年)12月には、6か月間の提出猶予を受けた3月決算会社による(コーポレートガバナンス・コードに対応した)コーポレートガバナンス報告書の開示が集中したが、本来、同報告書は「定時株主総会後遅滞なく」提出しなければならないため、今からおよそ3か月後には再び提出が相次ぐことになる。各社とも提出に向けた準備を進めていることだろう。
なかでも、12月にコーポレートガバナンス報告書を開示した1,858社の6割強が「エクスプレイン」を選択し(東証「コーポレートガバナンス・コードへの対応状況(2015年12月末時点)」参照)、またコンプライした企業でも中身が伴っていない例は少なくなかった「取締役会の実効性評価(補充原則4-11③)」については、各社でも検討と試行錯誤が繰り返されているようだ。
もっとも、金融庁と東証が共同で開催している「スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議」が先月(2016年2月)18日に公表した意見書「会社の持続的成長と中長期的な企業価値の向上に向けた取締役会のあり方」を見ると、取締役会の実効性評価の実施方法として、「企業の置かれた状況に応じ、様々な取組みが考えられるが、取締役会メンバー一人一人による率直な評価がまずもって重要となると考えられる」と記載されている(7ページの4(1)参照)。ここだけを読むと、「たとえ精緻な取り組みでなくても、とりあえず取締役各人に自己評価を求めれば当面はそれでOK」と、一種の“助け舟”を出しているようにも受け取れる。
一方で、その後では、適確に評価を実施するためには「会社の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上に向けて、取締役会が果たすべき役割・責務を明確化することがまずもって求められる」としている(7ページの4(2)参照)。これは、「本来は各社に特有の攻めのガバナンス像を明確化した上で、その実現に向けて取締役会が実効性を備えているかを測るべき」「攻めのガバナンスを欠いた実効性評価は無意味」である旨、釘を刺したものと言えよう。
以上を踏まえると、取締役会の実効性評価の“現在地”は、・・・
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