政府の経済政策は企業活動にも大きな影響を与えるが、アナリストの目から見ると、現在の日本政府は“固定観念”にとらわれ過ぎているように思われ、大きなリスクを感じざるを得ない。
先週(2016年5月27日)伊勢志摩サミットが終わったが、今回のサミットで安倍首相は最大のテーマを「世界経済」としたうえで、協調的な「財政出動」と為替介入を含む「通貨安(円安)政策」への理解を求めた。しかし、前者については「機動的な財政戦略」という玉虫色の表現でお茶を濁され、後者についてはオバマ米大統領から「近隣窮乏化政策を避ける」との発言で牽制を受ける結果に終わっている。
安倍首相の口から「財政政策」と「為替政策」が出てきたのは、日本の足元の経済情勢を踏まえてのことだろうが、それにしても、「日本経済=大幅な貿易黒字かつ円高な為替水準」という従来の固定観念にとらわれ過ぎてはいないだろうか。
まず財政出動を求める背景には、政府に「直近の日本経済は需要不足に陥っている」との認識があるからだと思われるが、これは日本経済が貿易黒字、すなわち国内における生産に比べて支出(消費・投資)が少ない状況を想定しているように見受けられる。確かに、高度経済成長期以降、日本の貿易収支は一貫して大幅黒字だったため、以前であれば「需要不足」との認識にも一定の説得力があった。しかし、貿易赤字が続く今日では事情は全く異なる。日本は支出が生産を上回る「需要超過」の状態にあり、・・・
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