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川崎汽船株の大量取得、買収防衛策を廃止していなければ違う結果に?

株式会社ベストムーブ 代表取締役 大島 真一

2016年6月21日に関東財務局に提出された大量保有報告書(変更報告書)によって、東証一部に上場する海運大手の川崎汽船株式会社に対するエフィッシモ・キャピタル・マネージメント(以下、エフィッシモ社)の株式保有比率が34.22%に達したことが明らかとなっている。シンガポールに拠点を置く投資ファンドであるエフィッシモ社が川崎汽船の保有者として出現したのは昨年8月であり、それからわずか9か月強の間に時価総額2,000億円超の同社株式を3分の1以上買い集めたことになる。6月11日の新聞記事では「(エフィッシモ社が)何を言ってくるか分からない。とにかく刺激したくない」との川崎汽船幹部のコメントも紹介されている。

エフィッシモ・キャピタル・マネージメント : 村上ファンドの元社員3人により設立された資産運用会社。シンガポールに拠点を置く。M&A、倒産、リストラといった企業のイレギュラーな状況を投資機会とするイベントドブリン戦略をとる。米国の年金基金など、欧米の機関投資家を主な顧客としている。純投資のみならず、投資先企業への提案や助言を行うこともある。

川崎汽船株式はPBRなどの基本的指標が割安であり、また、現預金の額が時価総額を上回るなど株主還元余地もあることがエフィッシモ社による同社への投資の誘因になったとみられる。しかし、ここまでの急速な買い上げのきっかけとなった可能性が高いのは、川崎汽船が2015年度の株主総会で買収防衛策を廃止したということだ。2015年度においては、川崎汽船、日清紡など3月期決算企業のうち19社が買収防衛策を廃止している。当時、川崎汽船は買収防衛策廃止の理由として、「国内外の機関投資家の声を参考に検討した結果、防衛策の必要性が低下した」「最近の株価上昇で時価総額が増加し、以前に比べると買収リスクが低下した」ことなどを挙げていた。

買収防衛策は適時開示事項であり、またそのほとんどが株主総会において決議されるという重要施策であるにもかかわらず、その具体的な内容は意外なほど知られていない、というのが筆者のアドバイザリー業務を通じての実感だが、買収防衛策を一言で説明すれば、・・・

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