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ダイバーシティ1.0と2.0の違い

この数年間、政府は企業における「ダイバーシティ」を実現するための政策を次々と打ち出してきた。その結果、上場企業の経営陣にもダイバーシティの必要性はかなり浸透しつつあるものの、ダイバーシティがもたらす経営上のメリットを心の底から実感する段階には未だ至っていないのが実情だろう。

政府がこれまでに打ち出した主な“ダイバーシティ政策”をおさらいすると――
2015年10月には「女性活躍推進法」が施行され、2016年4月以降、301人以上の労働者を雇用する企業は、①自社の女性の活躍状況の把握・課題分析、②行動計画の策定・届出、③情報公表などを行う必要が生じている(労働者が300人以下の企業は努力義務)。また、開示府令の改正により、2015年3月期の有価証券報告書からは女性役員の人数や比率の開示が求められ(開示府令の改正はこちらを参照)、2016年2月には厚生労働省が女性の活躍推進企業のデータベースの稼働を開始している。

さらに、コーポレートガバナンス・コードでも、ダイバーシティの代わりに「多様性」という言葉を使い、下記の事項について上場企業にコンプライorエクスプレインを求めている。

【原則2-4.女性の活躍促進を含む社内の多様性の確保】
上場会社は、社内に異なる経験・技能・属性を反映した多様な視点や価値観が存在することは、会社の持続的な成長を確保する上での強みとなり得る、との認識に立ち、社内における女性の活躍促進を含む多様性の確保を推進すべきである。

【原則4-11.取締役会・監査役会の実効性確保のための前提条件】
取締役会は、その役割・責務を実効的に果たすための知識・経験・能力を全体としてバランス良く備え、多様性と適正規模を両立させる形で構成されるべきである。また、監査役には、財務・会計に関する適切な知見を有している者が1名以上選任されるべきである。

【補充原則 4-11①】
取締役会は、取締役会の全体としての知識・経験・能力のバランス、多様性及び規模に関する考え方を定め、取締役の選任に関する方針・手続と併せて開示すべきである。

男性を中心とする均質的な組織の中からは企業価値の向上につながるイノベーションや斬新な経営戦略・商品が生まれにくく、長期的には企業そのものを衰退させかねないという政府の危機感は理解できるが、政府が企業に“要請”する形でダイバーシティの実現を図ろうとしたことで、多くの日本企業にとって、「ダイバーシティ」は政府からの要請に受身的・形式的に対応するだけのミッションになってしまっている感があるのは否定できない。

そのような問題意識の下、・・・

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