上場企業の非上場化策であるMBO(マネジメント・バイアウト:経営陣による買収)は、この10年で100件以上行われているが、なかにはMBO後数年で再上場するケースが散見される。直近では2016年6月に上場したソラスト(前身は2012年に上場(東証2部)廃止となった日本医療事務センター)がそれにあたる。また、東京証券取引所から上場承認をもらっていたにもかかわらず上場予定日(2016年9月30日)の3週間前に上場延期を発表したオークネットも、2008年にMBOで上場(東証1部)廃止となったという社歴を有する。過去には、チムニー(2010年に上場廃止、2012年に再上場)、すかいらーく(2006年に上場廃止、2014年に再上場)、ツバキ・ナカシマ(2007年に上場廃止、2015年に再上場)などの例もあり、今後も再上場を前提としたMBOが増加するものと予想されている。こうしたなか東京証券取引所は、12月2日付で日本取引所自主規制法人との連名による「MBO後の再上場時における上場審査について」を公表、2017年1月1日までパブリック・コメントを求めている。
MBOといっても、実際のところ経営陣が提供する自己資金はバイアウトに必要な資金のごくわずかにとどまり、資金の大半を「バイアウト・ファンド」から提供を受けるのが通常だ。株価が低迷している企業の経営者にバイアウト・ファンドが「株価低迷に悩むくらいなら、いっそのこと非上場化しませんか」と話を持ち掛けるケースが多いと言われる。MBO時に、経営陣が「非上場化により経営の自由度を高めたい」と語るのをよく見かけるが、経営陣の裏にいるバイアウト・ファンドにとって関心があるのは「経営の自由度」などではなく、金銭的な“損得”のみである。バイアウト・ファンドにとって、MBOは「安く買って高く売る」というアービトラージ(裁定取引)の手段に過ぎない。
バイアウト・ファンドは「高く売る」ために、バイアウト後の数年間は、バイアウトした企業のコストカット、販路拡大、業態変更などの企業価値向上(バリューアップ)に集中する。その後、バイアウト・ファンドは「M&A」か「再上場」により買収資金の回収(これを「イグジット=出口)」という)を図ることになるが、MBOを実施する段階で経営陣が「買収資金のイグジットとして再上場を想定している」ことを公表するケースも少なくない。
また、バイアウト・ファンドは「安く買う」ために、・・・
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