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集団訴訟の対象とならないためにやるべきこととは?

 米国の「クラスアクション」というと濫訴(むやみやたらに訴訟を起こすこと)で悪名高いが、日本でも、このクラスアクションに相当する「集団訴訟」を可能にする法律(消費者の財産的被害の集団的な回復のための民事の裁判手続の特例に関する法律。消費者訴訟特例法) が昨年(2013年)の臨時国会で成立したところだ。

 もっとも、日本では米国のような濫訴が生じる可能性は低いとの見方が強い。これは、消費者訴訟特例法では、濫訴を防止するために下記のような工夫がなされているからだ。

(1)政府から認定を受けた消費者団体(特定適格消費者団体)のみが提訴できる。
(2)生命身体に関する損害や、拡大損害(例えば、商品が発火して他のものを損傷した場合の損害)の賠償請求に関する提訴はできない。
(3)「消費者契約」の相手方(実際の購入者)のみが提訴できる。

 その一方で気になるのは、目的物(製品)の「瑕疵(製品が通常要する性能を欠いていること)」が明示的に損害賠償請求の対象に含まれている点(同法3条1項4号)である。これにより、ごく僅かな不具合でも安易に訴訟が提起される恐れがある。

 しかも、この法律では「消費者契約の相手方」が被告となることから、メーカーではなくそれを販売した小売店等が訴訟の対象になる可能性がある。もっとも、仮に賠償が認められた場合には、小売店等はメーカーにその賠償金を請求(求償)することになるため、メーカーも無関係ではいられない。

 政府から認定を受けた団体に訴えられれば、被告となる小売店等のみならず、製造元であるメーカーのレピュテーションは大きく傷つく。そうならないために品質管理に万全を尽くすべきなのは言うまでもないが、仮に問題が起きてしまった場合にはまず「リコール(自主的な製品の回収・交換等)」検討する必要がある。というのも、今後政府が策定する予定の消費者団体に対する監督指針では、企業(メーカー or 小売店等)がリコールをした場合には訴訟を提起できないとされる見込みだからだ。

 過去に起きた企業の不祥事で大きな騒動となったものには、問題発覚後迅速に自主的な対応をしなかった、あるいは十分な説明をしなかったという共通点がある。そこからは、不祥事そのものより、“誠実な対応”がなかったことを問題視する消費者心理が読みとることができる。

 役員としては、3年以内に予定されている法律の施行を見据え、問題が起こった場合の自主回収体制や広報のあり方を再度点検しておくことが必要だろう。