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「財団への第三者割当」を巡る投資家目線の論点

公益財団法人(以下、財団)を設立している上場企業は多い。企業が財団を設立する目的として「社会貢献」が強調されているケースが目に付くが、自社株式を財団に取得させれば、安定株主対策や買収防衛策にもなり得る()。

 財団は、上場会社か非上場会社かを問わずその株式の50%までを保有することが可能(公益法人認定法施行令7条)。

12月決算会社の2017年3月株主総会シーズンでも、財団を実質的な対象(形式上は信託銀行)とした自己株式の第三者割当を図る議案(正確には、自己株式の第三者割当に関わる事項を取締役会に委任する議案)がいくつか上程されている。その中でも、工作機械大手のDMG森精機が上程した議案(56ページの第4号議案参照)は、議決権行使助言会社最大手のISSが反対推奨したことに対して同社が反論したことから大きな注目を集めた。

今回の第三者割当における割当価格は同社株式の時価を大幅に下回る1円であり、有利発行に該当する。有利発行が行われると1株当たりの単価が低下し、既存の株主は不利益を被ることから、会社法上、有利発行を行う場合には株主総会の特別決議(2/3以上の賛成)が必要となるが、本議案に対する賛成率は67.0%であり、かろうじて可決された格好となっている。同社の前期末(2016年12月)の株主構成を見てみると、・・・

有利発行 : 例えば1株当たりの時価が千円のところ5百円で新株を発行するというように、新株や新株予約権の引受人にとって“有利な”価格(無償や時価未満)で新株を発行することをいう。
特別決議 : 議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、その出席株主の議決権の3分の2以上の多数による決議。

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