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日本企業のESG対応、過小評価も

日本の機関投資家による「サステナブル投資」が拡大している。サステナブル投資(サステナブル(sustainable)とは「持続可能」を意味する)とは、経済、環境、社会の持続性に配慮した投資手法であり、具体的には、経済的なパフォーマンスに加え、ESGに配慮して投資先を選定することと言える。ちなみに、サステナブル投資を日本で普及させる活動を行うNPO法人 日本サステナブル投資フォーラムは、サステナブル投資を、1. 地球と社会の持続可能性に配慮した投資であること、2. 原則1の投資プロセスや社会的な効果を資金の供給者に対して開示していること、の2つの原則を満たすものと位置付けている。

この日本サステナブル投資フォーラムを含む世界各国のサステナブル投資フォーラムが集計するサステナブル投資残高などの数値をグローバルレポートとしてとりまとめた報告書「Global Sustainable Investment Review 2016」によると、世界のサステナブル投資残高は22兆8,900億米ドルとなった。この報告書は隔年で公表されているが、前回調査時の2014年の数値と比較すると25.2%増加している。これに大きく寄与したのが日本で、日本の機関投資家によるサステナブル投資残高は2014年の70億米ドルから2016年は4,740億米ドルへと大幅に拡大した。その他、米国やオーストラリア、ニュージーランドでの拡大も目に付く。一方でこれまでサステナブル投資を牽引してきた欧州での伸びが鈍化している要因は集計基準の厳格化にあり、世界的にはサステナブル投資が伸びているというトレンドにあることは間違いない。

日本における増加要因の一つには、2014年の調査時点では調査対象が金額の把握が可能な個人向けの金融商品(公募投資信託、社会貢献型債券)に限られていたということも挙げられるが、それ以上に、投資家に社会・環境問題に関連するリスクへの対応を求める日本版スチュワードシップ・コード(指針3-3参照)や企業にESGやサステナビリティへの対応を求めるコーポレートガバナンス・コード(基本原則2の「考え方」、原則2-3、補充原則2-3①参照)の導入をはじめとした政策的な後押し、さらにはGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)がESG投資を提唱した国連のPRI(Principles for Responsible Investment=責任投資原則)に署名(2015年9月16日付)し、ESG指数の導入を決めたことが大きい。今後は、GPIFが採用する日本株ESG指数の公表(2017年夏を予定)や、日本版スチュワードシップ・コード改訂案に盛り込まれた議決権行使結果の個別開示(2017年3月29日のニュース「企業への影響は?日本版スチュワードシップ・コード改訂案の全容」参照)により、日本でサステナブル投資がさらに進む可能性は高い。

GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人) : 厚生年金と国民年金の積立金の管理・運用を行う厚生労働省所管の独立行政法人。運用資産の規模が100兆円を優に超える世界最大の機関投資家である。
PRI(Principles for Responsible Investment=責任投資原則) : 機関投資家に対し、投資判断プロセスにESGを反映することや、投資対象企業にESGに関する情報開示を求めることなどを提唱するもの。これに署名した機関投資家は、国連に投資の状況を報告する義務が生じるため、ESGを重視した投資を実践せざるを得ない。

こうした状況の中で企業に求められているのが・・・

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