今年4月以降、先端設備は「リース」で取得することを検討してもよいかもしれない。
リースにはオペレーティングリース(物を借りて賃借料を払う本来のリース)とファイナンスリース(実質的な割賦販売)の2種類がある。本来、オペレーティングリースの方がリース料が安く(ファイナンスリースではリース料の総額が「販売価格(正確には、リース料総額の現在価値≧見積り現金購入価格の90%)」となるのに対し、オペレーティングリースでは「販売価格-リース期間終了時の残存価額」となるため)、また、リース期間についても、法定耐用年数の75%以上とされ中途解約もできないファイナンスリースに対し、オペレーティングリースではリース期間の設定が自由で、契約によっては中途解約も可能。さらに、リース資産およびリース債務を貸借対照表に計上しなくてよい(=オフバランス。これにより、ROA(Return On Asset=総資本利益率。総資産に対する利益率)が高くなる)などメリットの多いオペレーティングリースだが、実際にはあまり普及していない。これは、自動車など一部を除き、リース期間が終了した資産を売却する中古市場が確立されていないため、リース会社が思ったほどリース料を下げられないことが一因となっている。
こうした事態を打開して、オペレーティングリースを使った設備投資を増加させるため、政府は日本の成長戦略を示した「日本再興戦略(2013年6月14日閣議決定)」の一環として立法された産業競争力強化法(2013年12月4日成立)の中で、「先端設備」のリース期間終了時においてリース会社によりリース資産が売却された場合、その損失の“半分”を国が負担するスキームを来月4月から実施する。
本スキームの対象とする「先端設備」には、3Dプリンター等の最先端設備のほか、工作機械であれば、ある程度新しいモデルはほぼ適用対象となりそうだ。ただし、資産を売却せずに再度リース(2次リース)した場合や、借手の会社が倒産した場合に発生した損失は保証されない。
本スキームの導入によりオペレーティングリースの利用が増えるかどうかを左右するのが、本スキームを活用したリース取引が「オペレーティングリース」としてオフバランスにできるのかどうかどうかという会計上の取扱いだ。上述のとおり、オペレーティングリースとしてオフバランスにできれば、リース資産およびリース債務を貸借対照表にオンバランスする必要がなくなり、ROAなどの財務指標が改善するからだ。
この点について企業会計基準委員会(ASBJ)はこのほど、本スキームによるリースの借手の会計処理を示す公開草案を公表したが、結論としては、本スキームだけ“特別扱い”はしないこととされた。つまり、上述したリース料総額やリース期間、中途解約の可否など、現行の「リース会計基準」に定めるリースの定義に従って「ファイナンスリースorオペレーティングリース」のいずれに該当するかを判断するということだ。
ただ、実際には、リース会社が本スキームの使い勝手を良くするために、「オペレーティングリース」に区分されるように契約内容を仕組むものと思われる。すなわち、ファイナンスリースに該当しないよう、リース料総額や解約不能リース期間を調整することが予想される。
その結果、「オペレーティングリース」に該当するケースがほとんどとなれば、本スキームを活用したオペレーティングリースの普及を後押しする可能性がある。これによりリース料が下がるようなら、最先端設備は「取得」せず、リースにすることも検討に値しそうだ。