政策保有株式に対する機関投資家の強い批判を受け、コーポレートガバナンス・コードには、「政策保有に関する方針の開示」など政策保有株式に関する規律が設けられている(原則1-4)。この原則1-4をコンプライしている東証上場会社は2017年7月現在で96.85%に上っているが(東証が9月5日に公表した「コーポレートガバナンス・コードへの対応状況 (2017年7月14日時点)」の3ページ参照)、これはあくまで「政策保有する側」の話に過ぎない。一方、「政策保有される側」に関する規律は現行のコーポレートガバナンス・コードには存在しない。
【原則1-4.いわゆる政策保有株式】 上場会社がいわゆる政策保有株式として上場株式を保有する場合には、政策保有に関する方針を開示すべきである。また、毎年、取締役会で主要な政策保有についてそのリターンとリスクなどを踏まえた中長期的な経済合理性や将来の見通しを検証し、これを反映した保有のねらい・合理性について具体的な説明を行うべきである。上場会社は、政策保有株式に係る議決権の行使について、適切な対応を確保するための基準を策定・開示すべきである。 |
「政策保有する側」から見た政策保有株式の問題点は、「株主資本が有効に活用されていない」ということに尽きる。実際、資産に占める政策保有株式が多い会社に対し、多くの機関投資家は、議決権行使や財務評価を厳しめにするといった対応をとってきた。
これを「政策保有される側」から眺めると、株主構成上「安定株主」が存在する会社の経営者が「株主の相当割合を占める安定株主が経営方針等に賛同してくれるだろう」と考えることで経営者にモラルハザードが生じ、ガバナンスの効いた経営ができなくなるのではないかという別の懸念が見えてくる。コーポレートガバナンスの観点からはむしろこちらの懸念の方が深刻とも言えるだけに、今後見込まれるコーポレートガバナンス・コードの見直しでは、政策保有される側に対する規律が論点になる可能性があろう。
新たな規律の導入にあたっては、・・・
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