株式会社浜銀総合研究所
調査部産業調査室 主任研究員 城 浩明
この数年、企業の「稼ぐ力」を示す指標(KPI)としては、ROE(Return On Equity=株主資本利益率(利益/株主資本))が重視されてきた。その背景には、2014年に経済産業省がまとめた伊藤レポート(持続的成長への競争力とインセンティブ~企業と投資家の望ましい関係構築~)が日本企業のROEについて「グローバルな投資家と対話をする際の最低ラインとして8%を超えるという水準を意識」することを求めたことや(45ページ上から6行目~)、議決権行使助言会社最大手のISS社が「過去5期平均ROEが5%を下回り、かつ改善傾向にない」場合、経営トップである取締役の再任に反対を推奨するとしたことなどがあったと考えられる。
KPI : 定量的に示される重要業績評価指標(Key Performance Indicators=KPI)のこと。KPIの例としては「新規顧客の獲得数」「従業員1人あたりの経費」「総資産額」などがある。
利益 : 実務上は、ROEの利益には「当期純利益」を使うことが多い。これは、株主資本に対応するのは、株主資本に帰属する当期純利益であるとの考え方による。(文責:上場会社役員ガバナンスフォーラム)
ところが、政府が2017年6月9日に閣議決定した「未来投資戦略2017 -Society5.0の実現に向けた改革-」の中で、新たなKPIとしてROA(Return On Assets =総資産利益率(利益/総資産))が掲げられている。具体的には、「形式」から「実質」へのコーポレートガバナンスおよび産業の新陳代謝を示すKPIとして、「大企業(TOPIX500)のROAについて、2025年までに欧米企業に遜色のない水準を目指す」という(114ページ参照)。これまでROEを意識してきた上場企業の経営陣の中には、ROEとROAの一体どちらを重視すべきなのか、戸惑う向きもあろう。・・・
利益 : 実務上は、ROAの利益には「営業利益」もしくは「事業利益」を使うことが多い。総資産に対応する利益は、営業利益あるいは事業利益であるという考え方による。(文責:上場会社役員ガバナンスフォーラム)
このコンテンツは会員限定です。会員登録(有料)すると続きをお読みいただけます。