近年、国内企業のM&Aはおおむね増加傾向にある。そのきっかけの一つには、政府が約3年半前の2014年6月末に打ち出した「日本再興戦略」で日本企業に「グローバル水準のROEの達成」を求め、そのために「内部留保を貯め込むのではなく、新規の設備投資や大胆な事業再編、M&Aへの積極活用」を求めたことがあろう。日本企業の低ROEの要因としてよく指摘されるのが、売上高営業利益率が低い(低マージン)ことである。その背景には同業他社の多さによる過当競争があるが、M&Aによって業界再編が進めば、低マージンが解消され、ひいてはROEが改善されることが期待される。また、少子高齢化などによって国内需要の縮小が見込まれることから、国内では、新たな生産設備等に投資をして過剰投資のリスクを抱えるよりも同業他社を買収し成長を目指した方が成功確率が高いと考える企業経営者も多いだろう。
ROE : Return On Equity=株主資本利益率(当期純利益/株主資本) 文責:上場会社役員ガバナンスフォーラム
売上高営業利益率 : ROEは、売上高(営業)利益率(利益/売上)×総資本回転率(売上/総資産)×財務レバレッジ(総資産/株主資本)に分解されるため、売上高(営業)利益率がROEに影響を与える。詳細は2017年11月21日掲載のニュース「上場企業の経営陣が重視すべきは「ROE」か「ROA」か」参照。 文責:上場会社役員ガバナンスフォーラム
では、実際のM&Aの成功確率はどの程度であろうか?この成功確率を考える場合、「失敗」は外部からも分かりやすいが、「成功」は分かりにくいという問題がある。なぜなら、失敗した場合は特別損失計上や事業撤退など外部から容易に確認できる“イベント”があるが、成功時にはこうした目立ったイベントがないからだ。また、どの時点で成功か失敗かを判断するのかという「時間軸」も考慮する必要がある。事業会社の場合、M&Aした企業を永続的に保有することが多く、例えばM&Aから3~5年目といった時点では「失敗」と判断されても、より長期で見たら成功だったと言われることもある。こうした留意点はあるものの、数多いM&Aの成功確率に関する研究の中でも世界的な学術研究結果によると、M&Aの成功確率は・・・
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