印刷する 印刷する

シェアは低い方がマーケティングがやりやすくなる?

 日本では、高度成長期以来長年にわたり、メーカーが流通の流れをコントロールする“チャネルリーダー”としての地位にあり、販売店の整備から広告宣伝に至るまで主導的な力を発揮してきた。しかし、近年、巨大な販買力を背景に実質的な価格決定権を持つ大型小売店が登場し、チャネルリーダーとしての地位はメーカーから小売店側に移りつつある。

 もっとも、メーカーと小売店の関係を規制する独占禁止法は依然として「チャネルリーダー=メーカー」を前提としている。その最たる例が、取引の相手方(小売店)の事業活動を不当に拘束する条件を付けて取引をすることを「不公正な取引方法」として禁止している点だ(独占禁止法19条・公正取引委員会告示15号)。

 特にメーカーが小売店の価格を拘束する行為(再販売価格拘束行為)は原則として違法とされている(公正取引委員会「流通・取引慣行ガイドライン」)。「価格の決定」という小売店にとって重要な競争手段が奪われれば、小売店間の競争が減殺され、経済の発展を阻害しかねないからだ。

 また、直接的に価格を拘束しないまでも、例えば有力メーカーが小売店に他メーカーの競合争商品の取扱いを禁じたり、販売地域を制限するといった「非価格制限行為」も、それが価格競争を奪うことにつながる場合には、違法とされている。

 しかし、チャネルリーダーがメーカーから小売業者に移りつつある現在、これらの規制に対するメーカーの不満は大きい。特に最近は、注目を集める新製品ほど価格比較サイトに取り上げられ、消費者は瞬時に最安値の小売店を探すことができるため、価格が下がりやすいという事態も生じており、メーカー側からは、例えば新製品の販売から一定期間、小売店が消費者に販売する「再販売価格」を拘束できるように規制を緩和すべきとの声も上がっている。

 ただ、再販売価格の拘束に関する規制を緩和するべく独占禁止法が改正される可能性は低い。市場においてもっとも重要な価格競争の制限に直結しかねないからだ。

 現実的な落とし所として、・・・

このコンテンツは会員限定です。会員登録(有料)すると続きをお読みいただけます。

続きはこちら
まだログインがお済みでない場合はログイン画面に遷移します。
会員登録はこちらから