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採用戦略としてのLGBT対応

欧米企業に比べ日本のLGBT対応は遅れていると言われるが、経団連が昨年(2017年)5月に公表した「ダイバーシティ・インクルージョン社会の実現に向けて」に掲載された調査結果(15ページ~参照)によると、LGBTへの取り組みが必要と考える企業は91.4%に上っており(質問1)、実際、4分の3の企業が既にLGBTに関して何らかの取り組みを実施している(42.1%)か検討している(34.3%)と回答している(質問3)。

LGBT : レズビアン(L)、ゲイ(G)、バイセクシュアル(B)、トランスジェンダー(T)を総称する造語。近年、ダイバーシティの文脈の中で、ビジネスシーンにおいても使われる機会が増えている。

もっとも、「LGBTに関して何らかの取り組みを実施しているか検討している」と回答した企業による具体的な取り組みとしては、「性的指向・性的自認等に基づくハラスメント・差別の禁止を社内規定などに明記」が75.3%と最も多く、次いで「社内セミナー等の開催(69.1%)」「LGBTの社員に向けた社内相談窓口の設置(62.4%)」と、今のところ社内的な取り組み、あるいは言葉(文字)による取り組みが目に付く。これに対し、「LGBTに関連する社外のイベントへの協力(18%)」など社外に向けた取り組みはまだそれほど広がっていないのが実情だ(質問4)。

一方、人種・国籍が多様化している米国の企業にとって、ダイバーシティへの取り組みは優秀な人材の獲得等の観点から元々重要な経営課題の一つに位置付けられており、特にLGBT対応は、オバマ前大統領時代に同性婚の合法化などLGBTの権利が大幅に拡大したこともあり重要性が高まっている。こうした中、福利厚生や人事制度をLGBTのパートナーに適応させることはもちろん、“LGBT従業員グループ”の設置・支援、LGBT団体への寄付などの慈善活動、LGBTパレードの支援、LGBTを対象としたオリンピック「ゲイ・ゲームズ」への協賛・参加、全米ゲイ&レズビアン商工会議所のコーポレート・パートナーとなるなど、言葉だけでなく具体的な行動を伴った多岐にわたる体外的な取り組みが実施されている。また、社内でも一般社員向けの啓蒙活動にとどまらず、LGBTを対象としたリーダーシップ研修を実施したり、自己申告制(申告された情報は秘匿)でLGBTの社員数や定着率の把握に努めたりするなど、LGBTの活躍を推進しようという姿勢がみられる。

こうした動きにおいて意識されているのが、・・・

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