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「公募」or「第三者割当」、自社に適した資金調達方法は?

株式会社プルータス・コンサルティング
山本 修平

上場企業の資金調達方法として定着している「第三者割当」だが、株式等による資金調達を検討する際、しばしば第三者割当と比較検討されるのが「公募」だ。

第三者割当とは、文字通り「特定の第三者」に対して株式等を割り当てることで資金調達を行う方法をいう。ちなみに、既存株主の持株比率に応じて株式等を割り当てるのは「株主割当」であり、すべての既存株主を対象とする点、「特定の第三者」を対象とする第三者割当とは異なる。

これに対し公募とは「不特定の者」に対して株式等を割り当てることにより資金調達を行う方法だが、第三者割当も公募も借入れではなく「株式」等による資金調達であり、それゆえ一般的には成長資金(設備投資、研究開発など)、場合によっては借入金の返済や将来のM&Aに備えるといった目的に用いられるという点は変わらない。目的が変わらない中で、公募よりも第三者割当が選ばれるケースが少なくない理由としてまず挙げられるのが、資金調達のスケジュールの問題だ。

上場企業(厳密には会社法上の公開会社)による第三者割当は、株式等の発行が「有利発行」に該当しない限り、株主総会での承認を経ずに、取締役会の決議のみによって行うことができる。第三者割当を行う際のスケジュール概要は下表のとおり。下表にもあるように、第三者割当による調達資金の使途は、有価証券届出書適時開示書類によって詳細な開示が求められている。これは、第三者割当は(経営陣に株式等を割り当てることにより)経営陣の支配権維持などに利用されかねないからだ。このように資金調達を目的としない第三者割当については、既存株主の訴えにより株式の発行が裁判所によって差し止められることもあり得る。・・・

公開会社 : 発行する株式のすべてに譲渡制限がついていない会社
有利発行 : 例えば1株当たりの時価が千円のところ5百円で新株を発行するというように、新株や新株予約権の引受人にとって“有利な”価格(無償や時価未満)で新株を発行することをいう。
有価証券届出書 : 新規上場申請時や1億円以上の公募を実施する時などに財務局に提出する書類。有価証券報告書(上場会社が上場後に毎年財務局に提出する書類)に証券情報(募集・売出の株数や価額などの詳細が記された情報)が追加された様式となっている。
適時開示 : 投資家に投資判断材料の提供の機能を果たす制度として、金融商品取引法に基づく法定開示制度(有価証券届出書、有価証券報告書、四半期報告書など)と併存する制度。適時開示は証券取引所の規則により求められ、最新の重要な会社情報を迅速に投資家に提供するという点に特徴がある。株価は時々刻々と発生する各種の会社情報によって売買が大きな影響を受けるため、適時開示の重要性は高い。(文責:上場会社役員ガバナンスフォーラム)

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