印刷する 印刷する

改訂CGコードで把握が求められる「資本コスト」、投資家にはどう説明する?

現在パブリックコメントに付されているコーポレートガバナンス・コード改訂案(以下、CGコード改訂案)に新しく盛り込まれた重要な用語として「資本コスト」がある(CGコード改訂案関連のニュースは2018年4月3日のニュース「東証、改訂CGコードに対応したCG報告書の年内提出求める」参照)。具体的には以下の2つの原則において「資本コスト」が追加されている。

【原則1-4.政策保有株式】
上場会社が政策保有株式として上場株式を保有する場合には、政策保有株式の縮減に関する方針・考え方など、政策保有に関する方針を開示すべきである。また、毎年、取締役会で、個別の政策保有株式について、保有目的が適切か、保有に伴う便益やリスクが資本コストに見合っているか等を具体的に精査し、保有の適否を検証するとともに、そうした検証の内容について開示すべきである。
【原則5-2.経営戦略や経営計画の策定・公表】
経営戦略や経営計画の策定・公表に当たっては、自社の資本コストを的確に把握した上で、収益計画や資本政策の基本的な方針を示すとともに、収益力・資本効率等に関する目標を提示し、その実現のために、事業ポートフォリオの見直しや、設備投資・研究開発投資・人材投資等を含む経営資源の配分等に関し具体的に何を実行するのかについて、株主に分かりやすい言葉・論理で明確に説明を行うべきである。

もっとも、それぞれのコードが言う「資本コスト」とは具体的に何であるのか、またどこまで精緻な説明が求められるのかなど、企業側からは「対応を検討するには曖昧過ぎる」との声が聞こえて来る。例えば以下のようなものだ。

① 「株主資本コスト」なのか「加重平均資本コスト」なのか?
② 「資本コスト」を算定する方式や前提条件を詳しく示すべきか?
③ 前提次第でブレる数値に意味があるのか?

株主資本コスト : 経営陣(取締役)の使命は、基本的に「株主から預かった資金(株主資本)を元手に展開する事業から獲得するキャッシュ・フローが“株主の期待利回り”を上回ること」にあり、ここでいう“株主の期待利回り”を「株主資本コスト」という。
加重平均資本コスト : 銀行等(債権者)が企業に対し要求する期待利回りが「有利子負債コスト(金利)」であるが、株主と債権者では資金提供リスク(将来獲得できるキャッシュ・フローの不確実性)が異なるため、両者が要求する期待利回りも異なる(通常は株主のリスク(不確実性)の方が高いとされている)。そこで企業全体としての資金調達コストは、両者の期待利回り(「株主資本コスト」と「有利子負債コスト(金利)」)を資金提供額に応じて加重平均することにより算定する。この資金調達コストが「加重平均資本コスト(英語ではWeighted Average Cost of Capital=WACC」であり(通称はワック)、これを上回るキャッシュ・フローの獲得こそが、投資家が経営陣(取締役)に求めているものと言える。加重平均資本コスト(WACC)は資金提供者が要求する最低限の期待利回り(期待収益率)であるため、「ハードル・レート」とも呼ばれる。

それぞれについて説明しよう。・・・

このコンテンツは会員限定です。会員登録(有料)すると続きをお読みいただけます。

続きはこちら
まだログインがお済みでない場合はログイン画面に遷移します。
会員登録はこちらから