今国会で成立する見込みの会社法改正案では、社外取締役や社外監査役の就任要件を厳しくしたり、社外取締役を置かない場合にはその理由を定時株主総会でも説明しなければならないこととするなど、「コーポレートガバナンス」の強化に主眼が置かれているが、コーポレートガバナンスの規制強化は会社法だけでは終わらなそうだ。
それを示すのが、自民党の日本経済再生本部が先月23日(2014年5月23日)に発表した「日本再生ビジョン」である。これは昨年6月14日にアベノミクス“第三の矢”として政府が打ち出した「日本再興戦略」を受けて、その見直し(6月に予定)に向けた具体的な施策を提言するもの。
同ビジョンは以下の7つの柱から構成されているが、このうち企業経営に直接影響しそうなのが、1の「強い健全企業による日本再生」だ。
1.強い健全企業による日本再生
2.豊かさ充実に向けた公的資金改革
3.人間力の強化
4.日本再生のための金融抜本改革
5.起業大国No.1の実現
6.輝く女性の活躍促進
7.成果の実感と実現を地方から
「1.強い健全企業による日本再生」は大きく2つ、法人税改革とコーポレートガバナンス改革に分かれている。法人税改革としては「成長志向の法人課税の体系」を構築するとし、具体的には「課税ベースを拡大しつつ、税率を引き下げる」ことを提言している。グローバルな立地競争力を強化する観点に加えて、重い税負担とそこから起こる節税志向がROEを低く抑えている側面があることを踏まえ、「利益を出して成長を実現する」経営を企業に求めるものと言える。
コーポレートガバナンス改革にはさらに2つ、株式持合いに関する規律付けと、コーポレートガバナンス・コードの制定に関する内容が含まれる。日本再生ビジョンでは、株式持合いは「企業経営から緊張感を奪うもの」であるとして、解消を進めるべきと主張している。その方策として、(1)有価証券報告書における政策保有株式の理由開示を厳格化する、(2)持合株式の市場放出に株価が影響を受けないよう、市場外売却の仕組みを検討する、などが挙げられている。経済界による根強い反発をどこまで抑えられるかが注目されよう。
コーポレートガバナンス・コードの制定は、機関投資家の受託者責任などを定めたスチュワードシップ・コードが2014年2月に確立したことを受けて、企業に対し、投資家との対話をベースとした「望ましいガバナンスの具体的な姿」を示し、これを「遵守するか、さもなくば、説明するか」(comply or explain)を明らかにするように求めることが目的とされている。コーポレートガバナンス・コードの具体的な内容としては、例えば以下のようなものが挙げられている。
(1) 独立社外取締役
・ 上場株券の発行者は、取締役である独立役員を少なくとも2名以上確保することとする。
・ 取締役である独立役員を少なくとも2名以上確保しない場合、当該事業年度に関する定時株主総会において、取締役である独立役員を少なくとも2名以上置くことが相当でない理由を説明しなければならない。・・・
このコンテンツは会員限定です。会員登録(有料)すると続きをお読みいただけます。